ドライバーも同乗者もリラックスさせてくれる快適性。そんなボルボの伝統的なインテリア設計思想は、先進的なインターフェイスを手に入れた新型V60にも受け継がれた。だが、さらに増した魅力はそれだけではない。広げられた後席と荷室といった実用面にも注目したい。




TEXT●工藤貴宏(Kudo Takahiro)


PHOTO●中野幸次(Nakano Koji)


ボルボXC40の使い勝手を徹底チェック〈VOLVO XC40〉

取材車のプロフィール「V60 T5 Inscription」

ボディカラー:パーチライトメタリック


インテリアカラー:チャコール&ブロンド


シートカラー:ブロンド


シート:パーフォレーテッド・ファインナッパレザー


オプション:チルトアップ機構付き電動パノラマ・ガラス・サンルーフ、メタリックペイント、Bowers&Wilkinsプレミアムサウンド・オーディオシステム、ドライビングモード選択式FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー、19インチアルミホイール“5マルチスポーク”ダイヤモンドカット/ブラック&19インチタイヤ

〈運転席〉大画面タッチパネル&音声入力では、直感的操作性を重視

 12.3インチのメーターとインパネ中央のタッチパネルの9インチディスプレイを組み合わせることで先進性を醸し出す。最大の注目ポイントは、タッチパネルと音声操作の活用による先進的なインターフェイスの実現。結果、物理スイッチを最小限に減らすことができ、操作性がスッキリした。

ミラーはフレームレス構造を採用。外寸に対して鏡の面積を広くとれるという実用面のメリットをもたらすだけでなく、洗練された印象も与えてくれる。

「Inscription」に備わるヘッドアップディスプレイ。速度や標識情報に加え、ナビ案内中は簡易的な道案内も表示する。



全グレードともメーターはフル液晶で、左右にタコメーターとスピードメーターを配置。その間にシフトポジションとデジタル速度計が表示される。また、左右文字盤間の中央に表示切り替えが可能なエリアを組み合わせ、ナビ画面(ルート案内中は交差点案内や高速分岐案内も表示) のほか、各種注意喚起、オーディオ情報などといった様々なインフォメーションをドライバーに伝えてくれる。

シフトセレクターはコンベンショナルな機械式で、前進は「D 」のみ。だが、そこから左側にレバーを倒し、そのレバーを前後に操作することで任意のギヤを選択することができる。

凝ったデザインのスターターダイヤル、ドライブモード切り替えダイヤル、そして電動パーキングブレ ーキ(自動作動&自動解除なので触れる必要は基本的にない) &ホールドモードスイッチは、シフトレバー後方に配置。ホールドモードは、ペダルから足を離しても停止状態を保持する機能のこと。

支点を下側にしたオルガン式アクセルペダルは、フットレスト並みのサイズを採用。体格のいいドライバーのポジションにもフィットすることを念頭に置いて設計されたのだろう。

一般的なクルマよりオートライトでの点灯タイミングは早めの設定となっている。さすがボルボ ならではといったところだろう。ライトスイッチは先代のダイヤル式からレバー式に変更された。
新世代ボルボはワイパー作動モードの上下位置の刷新にチャレンジ。V60も新型では先代と逆方向の操作となるが、オーナーになればすぐに慣れることだろう。


クルーズコントロールは、左側のステアリングスイッチをひと押しして作動開始。ハンドル操作も補助してくれるほか、渋滞時の停止保持も行う。
メーター内の表示切り替えと音声入力開始のボタンは、右側のステアリングスイッチに装備。車両機能呼び出しに加え、接続したスマートフ ォンへの音声操作も可能。


メーター表示は好みに合わせて

Contrast
Glass


Chrome rings
Performance


メーターの表示は、4つのモードから任意に選ぶことができる。違いは、色や文字盤外周のリング、文字盤の表示方法(指 針orグラフ状)などとなる。

〈インフォテイメント&空調〉多機能ディスプレイに機能を集約

「SENSUS(センサス)」と呼ばれる、9インチの特大タッチパネルディスプレイと音声入力を組み合わせた統合インターフェイスを搭載 。ナビゲーション、オーディオ、電話、空調、車両設定、シート調整、取扱説明書など、多岐にわたる機 能の操作系統が統合されており、音声入力も含めて操作はスマートフォン感覚で行うことができる。



地図は、画面いっぱいに広げることができる。目的地検索は、画面タッチや音声入力のほか、画面をパッドとして使っての手書き入力にても可能。日本語にも対応している。

後席ヘッドレストを倒したり、ESCをスポーツモードに入れたりなど、数多くある機能の操作や設定もこの画面から行える。
画面下にあるボタンを押せば、ホーム画面に戻ることができる。それぞれの項目をタッチすれば詳細画面に移行していく。スマートフォン感覚での操作が可能。


平均燃費やその過去履歴も表示。なお、この車両の平均燃費は400km弱の走行で10.2km/L。燃費が悪化しがちな撮影時も含んでのことと考えれば良好な結果だ。
アプリを追加することで機能を増やしたりアイコンの位置を移動したりと、まさにスマートフォン同様の操作が行える。CarPlayやAndroidAutoにも対応。


全方位モニターも大画面で見やすい。前後左右いずれかを部分的に拡大できるほか、ハンドル操作を自動化したパーキングも利用可能。
電子取扱説明書も収録。ビジュアル的に検索できるので、紙の説明書よりも便利だ。重要事項を抜粋した紙の取扱説明書も付属する。


NAVIGATION



地図は、画面いっぱいに 広げることができる。目的地検索は、画面タッチや音声入力のほか、画面をパッドとして使っての手書き入力にても可能。日本語にも対応している。

AIR CONDITIONER



エアコンの作動状況はディスプレイの一番下に常時表示(ナビ画面最大時を除く)。その温度表示に触れば設定温度を切り替える画面に切り替えられるほか、「暑い」と言えば温度が下がるという音声入力にも対応している。「T5 Inscription」は、前席左右と後席左右の4つにキャビンを分けてそれぞれ温度を設定できる4ゾーン式を採用。その他のグレードの前席の温度設定は、左右インディペンデント式となっている。後席の吹き出し口はセンターコンソール後部とBピラーに用意。

OTHER ITEMS

助手席エアバッグキャンセラー:助手席エアバッグの作動を任意に止めることができる。作動を止めれば助手席にもチャイルドシートが装着でき、子供を横に座らせてのドライブも可能となる。

パワーチャイルドロック:子供を乗せる際、内側からドアやウインドウを開かないようにできる安全機能の「パワーチャイルドロック」は、運転席から遠隔操作することができる。

非接触式キー:携帯するだけでドアアンロックやエンジン始動ができる非接触式キー。まるでアクセサリーのようなデザイン性の高さに目を奪われる。なお、「Inscription 」はシートと同じ革を張って仕上げられている。

AUDIO

日本仕様に用意されるオーディオは3タイプ。「ハイパフォーマンスオーディオ」を「Momentum 」に、「haman/ kardon」を「Inscription」に標準装備。 さらに、オプションとして最高峰の「Bowers&Wilkins」も用意されている。 パワフルなアンプと15 個のスピーカーで作り上げたサウンドは、素晴らしい深みと響きを奏でてくれる。

〈シート&快適性〉足元が広くなって快適性が増した後席

 ボルボ全モデルに共通することだが、居心地のいい空間と快適性は長距離移動するとよくわかる。新型V60のトピックは後席スペースの拡大 。膝まわりで先代比+36mmとなり、ゆとりが増している。

前席の着座位置は低く、SUVとは一線を画した“包まれ感” を味わうことができる。なお、最上の快適性とスリムなデザインの両立を目指し設計されたフロントシートは、90シリーズと同様の構造。座り心地は先代よりも硬めとなったが、身体全体を包み込む感覚はしっかりと受け継がれている。運転席の電動調整は全車に採用されており、「Inscription」ではより細かい調整機能やベンチレーションも搭載。

先代に比べて足元が広がったことは、ドアを開けた瞬間に実感できるほど歴然。(旧世代モデルではあるが)車体がひとまわり大きなV70よりも広いといえば、理解しやすいだろう。その上、ヒール段差(床と座面の段差)が高く取られており、適正な乗車姿勢が取りやすい。頭上クリアランスも申し分なし。ただ、左右席間の床にあるトンネル(ふくらみ)は大きい。シートは、座面の前後長を長くとり背もたれは高くした設計。快適性を重視したボルボの伝統であり美学の表れでもある。

後方視界を広げるため、後席のヘッドレストを倒せるボルボ伝統の機能も引き続き採用。運転席からディスプレイ上にて操作可能。一方、中央のヘッドレストはここまで上がる。

運転席のシートポジションだけでなく、連動してミラーの角度を2パターン記憶。スイッチはドアに設置。
シートヒーターや表面を換気してムレを防ぐベンチレーション機能は、センター ディスプレイで操作する。


背もたれのサイドサポートは電動機能で調整。シートのタイト感までも自分好みに変更することができる。
「Inscription」にはマッサージ機能も搭載。身体に刺激を与えることで緊張状態を緩和し、疲労軽減に効果。


電動調整スイッチは座面脇に設置。「Inscription 」は、 運転席側のスイッチで助手席も動かすことができる。
身長の高い人にうれしいのが、座面の長さを延長する機能。電動式で、「Inscrip tion」に装備される。




前席は、低い座面に沈み込むように座るスタイルとなる。後席は、ルーフが水平に近い状態というワゴンボディのメリットが活かされており、乗降時、頭上への干渉を防いでくれる。また、足元空間が拡大されたことで座面の端とBピラーとの間隔が広くなり、足先の出し入れをスムーズに行うことができる。

幅広のセンターアームレストの上部には、トレーがふたつ備わっている。前方にはドリンクホルダーを内蔵。
カバー付きの「ISOFIX 」チャイルドシート取り付けバー。間口が広いので金具もしっかり見え、取り付けやすい。


〈室内の収納スペース〉使い勝手をより考慮した収納の数々

 Aピラーのクリップのように、独特のアイデアを盛り込むなど収納面でも個性的なボルボ。多機能なグローブボックスやセンターコンソールのシャッタ ーといったボルボならではのアイデアがふんだんに盛り込まれている。



グローブボックスはリッドのキーロックが可能(そのためのキーが内部に用意されている)。 またエアコンの風を導いて保冷ボックスとしても使用できる。上側には取扱説明書も収まるトレーがあり、最上部にはETCユニットを設置。

センターコンソールの収納スペースはシャッターを閉めればトレーとして使え、見た目も機能性もスマート。前方2カ所にはトレー(キーが置ける) を、後方にはドリンクホルダーを用意する。



センターコンソールボックス内には、USB端子が2 個備わっている。その内のひとつは、車両との通信にも使う。

助手席足元(センターコンソール側面)に設けられたネットは、薄めのものだけでなく、デジカメといった厚みのあるものもしっかりホールドしてくれる。
容量は控えめとはいえ、CDケー スを収めることができるコンソールボックスを装備。なお、「T5」 系のモデルは後方にCDプレーヤーを搭載。


サンバイザー裏に備わるカードホルダーは、サッとカードを挟めるクリップ式。 シンプルで使いやすい。
ボルボの伝統ともいえるAピラーのチケットホルダー。駐車券を挟むのに最適な独自アイデア。


フロントのドアハンドルは、底が設けられ小物が置ける形状に。“ガラケー” の収納が可能。
リヤのドアハンドルにも小物を置くことができる。形状や容量はフロントとほぼ同様。


大容量サイズのフロントドアポケットは、多彩な物が収納でき実用性に優れている。
リヤドアポケットは、フロントに比べると容量は小さめ。コンパクトサイズの手帳が収まる。


多機能の後席センターアームレスト。 後方のリッド付きトレーはテーブルとしても活用できる。
入れたものが一目瞭然でわかる。ネット式のシートバックポケット。パソコンといった重量のあるものでもしっかり保持してくれる。


バニティミラー:全グレードで運転席/助手席のサンバイザー裏にバニティミラーを組み込む。ミラーの脇には、高級車らしくリッドの開閉に連動して点灯するライトも備わる。

キャップレス給油口:セルフスタンドでのわずらわしさから解放してくれるのが、キャップがない給油口。リッドを開けるだけで給油でき、キャップ自体がないため、キャップの閉め忘れも防止できる。

パノラマ・ガラス・サンルーフ:先代よりも5割広がった、V90と同じサイズの開口部が自慢。ガラスは2枚で、前方はスライド&チルトが可能だ。駐車中に外気温が25度以上になるとサンシェードが自動で閉まる機能も搭載。

ウォッシャーノズル内蔵ワイパー:ウォッシャー液はワイパーブレードに組み込まれたノズルから噴射。V60からはフロントに加えてリヤもこのタイプになった。視界を邪魔せず、ウォッシャー液の使用量も少なく済む。

〈ラゲッジスペース〉クラストップの荷室容量を誇る

 新型V60における最大のトピックは、ラゲッジスペースの容量が大幅に増えたこと。後席使用時の容量は529Lで、先代(430L)を大きく上まわるのはもちろん、アウディA4アバント(505L)、メルセデス・ベンツCクラス・ステーションワゴン(460L)、BMW3シリーズツーリング(495L)などのライバル勢も上まわる実力である。

後席使用時の床面の奥行は1050mm。左右幅はホイールハウス間で1030mm、その後方(写真手前側)の最も広い部分で1300mm確保する。トノカバーまでの天地高は450〜470mm。

後席格納は、荷室開口部付近にあるスイッチで遠隔操作が可能。左右を独立させて倒すことができる。脇にはDC12Vアウトレットも用意。

後席を倒した際には、床面がフラットになるボルボの伝統がしっかり守られている。運転席のポジションを身長168cmの筆者に合わせた状態で計測したところ、奥行きは1980 mm。大人ふたりが横になってゆったりと寝られるほど。

トノカバーは D ピラーに沿って上方に跳ね上げることができ、荷物の積み下ろしの際に便利。もちろん巻き取ることもできる。
荷崩れを防止するラゲッジセーフティネットも装備。後席使用時はシートの後ろに、後席を畳んだ際は写真のように前席の直後に装着可能。


テールゲートの裏側に三角表示板が格納されているのは素晴らしいアイデア。荷物満載時でも、サッと取り出すことができるからだ。その上にふたつあるスイッチは、テールゲートを閉じる際に使用。うちひとつは、閉じると同時に全ドアをロックする便利な機能付き。

床の一部を跳ね上げれば、バッグなどが吊り下げられるフックを装備。荷物が荷室内を転がったり袋の中身が飛び出すといったアクシデントを防ぐ。固定用ベルトも備わるという独自アイデアも光る。
アンダートランクは床下の広い範囲にわたり、深さは最も深い部分で170mmを確保。ブースターケーブルなどの緊急用ツールや洗車道具を収納するのにも便利。


左側の壁には、ネット式のポケットを設置。奥にある黒いケースは、取扱説明書一式が収まったぶ厚めの車検証ケース。
後席中央部分だけを貫通させられる作りになっている。開口部は大きくないが、釣竿といった長尺物を積む程度ならこれで十分。


右側の壁には2カ所のフックと荷物の固定用ベルトを装備。ちなみに、フロアには左右合計4カ所に丈夫なフックが備わっている。

荷室フロアは開口部下端と段差がなく、地上高は地上615mm。「Inscription 」には電動テールゲートが標準で装備されており、最近流行のハンズフリー機能 (バンパー下で足を動かすと反応して開閉する)も組み込まれている。両手がふさがっている際の開閉時に便利。


モーターファン別冊 インポートシリーズ Vol.65 ボルボV60のすべて

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ボルボV60の使い勝手を徹底チェック〈VOLVO V60〉