スズキ・スイフトスポーツやトヨタ・86、ホンダ・シビックタイプRといった現行車種のチューンアップパーツが並ぶなか、ブース中央を飾っていたのが日産のBCNR33型スカイラインGT-R。




TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI)

 実はこの車両、かつて0-300km/hアタックで驚異的な記録(17秒76)を叩き出した、HKS T-002と呼ばれる車両そのもの。GT-R誕生50周年となる2019年に合わせて、レストアと同時に最新のパーツと技術を投入、現役当時よりも進化した現代のT-002として甦ったものだ。




 そして、その裏側には第二世代GT-Rの心臓部であり、その代名詞ともいえるRB26DETT型エンジンの新作パーツも展示されていた。なかでも目を引いたのがチタン製のピストンピンだ。




 このピストンピン、現代の設計技術と製造技術が盛り込まれるかたちで新規に開発された、2.8L化キット向けとして用意されたもの。新作キットの特徴となるレスポンスに特化した仕様(ハイレスポンス)のオプション部品として開発が進められているとのこと。




 その物性から、チタン素材をピストンピンに利用するにはチャレンジ的な要素もあることから、素材面の吟味(チタン合金にも多くの種類が存在する)はもちろん、製法にも工夫が凝らされているとのことだったが、ハイレスポンス仕様という、割り切りもその後押しとなったという。




 RB26DETT型の搭載される第二世代GT-Rも、その始まりとなるBNR32の登場からはや30年。パワーを追求しても、シャシー性能には限界があるということで、それならばパワーはそこそこに、気持ちの良いレスポンスをというのが、ハイレスポンス仕様のコンセプトで、目標とするパワーを500ps前後に設定、各部品の強度を最適化するかたちであえて抑えながら、軽量化に重点が置かれている。




 この軽量化の追求から採用となったのがピストンピンへのチタン素材採用というわけだが、パワーの目標値が明確となったことも、その検討において後押しとなったことは間違いない。その背景には、かつてよりも緻密に強度を設定できるようになった、現代の設計技術の存在もある。




 DLC(ダイアモンド・ライク・カーボンコーティング)も施されるこのピストンピンは、フリクションをも抑えることでハイレスポンスを実現するという。パワー競争の第一線を担うという、かつての立ち位置を退いたことで変化したRB26DETTのチューニングは、最新技術による進化も加わりながら円熟の時を迎えている。

T002のエンジンルーム。レストアと同時にエンジンには最新の技術とパーツが投入された。STEP3キットにより排気量は2.8Lとされており、タービンはGTⅢ-5Rのシングルで排気はエクステンション部のみでボンネット上に開口。スロットルは大口径のシングル。

STEP3と呼ばれるRB26DETTの新作キット向けに用意される予定で開発されているチタン製のピストンピン。表面はDLCで仕上げられており、低フリクション化という効果も加わり、より高いレベルでレスポンス向上が期待できる。

左がチタン製で、中央が標準仕様のピストンピン、そして右が新作となるハイレスポンス仕様のピストンピンで、標準と比べ全長が短くなっている。チタン製ピストンピンはハイレスポンス仕様のオプションを予定しており、全長は一般的な素材を用いるハイレスポンス仕様と同寸。もともとハイレスポンス仕様のピストンピンはピン長が短く肉薄としているために軽量となっているが、チタン製のそれはこれをさらに上回る超軽量に仕上げられている。

新作の2.8ℓキット。クランクが二本あるのはパワー重視の標準仕様(左)とハイレスポンス仕様(右)が用意されるため。どちらも鍛造素材からの削り出しという点は共通で、最新の設計技術を用いたことで標準仕様でも慣性重量で-5%(従来比)、ハイレスポンス仕様では-15%もの軽量化を実現している。

STEP3キットで2.8ℓに拡大、GTⅢ-2530スポーツタービン、インテーク側カムに油圧式のカムフェーザーを追加するV-camなどを組み合わせたエンジン。このキットによる2.8Lのショートブロック(ブロックからピストン、クランクまでのサブアッセンブリ)も用意される予定だという。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【TAS2019ブース探訪(HKS編)】レストア& 最新パーツを投入して蘇ったT-002