1978年に市販が開始されたPというモデルがすべての始まりだった。そのPが改良され、ネーミングをPXと変え、以来40年続くヒットモデルに成長。惜しくも生産中止となってしまったが、まだまだ世界中のファンがPXを愛し続けている。


REPORT●大家伝(OYA Den)


♯1 手でギヤチェンジするベスパPX。その新車がもうすぐ(日本でも海外でも)買えなくなるという事実 ♯1

40年もの間、ほぼ変わらないルックスを維持してきたPX。古めかしいと捉えるか、懐かしいとと捉えるか……。どちらにしろファンはこのルックスも含め、PXを愛しているのだ。

 前回は、PXがベスパの歴史の半分以上を担ったハンドチェンジスクーターの完成形だという話をさせてもらった。そして前回の冒頭で触れているように、40年もの長い期間世界中の人々が親しんできたPXはすでに生産中止となっている。そう、基本的にPXを新車で買うことはもうムリなのだ。




 さて、ここからはPXのディテールについて詳しく見ていくことにしよう。最終的なPXのラインナップだが、150ccと125ccの2ストエンジンを搭載して展開。どちらも4速ハンドチェンジ機構を備えていた。


 エクステリアに目を向けると、ホーンカバーにもなっているノーズグリルがPXの元となったシリーズ初期モデルのPを彷彿させるデザインである事に気付く。これはファンを喜ばせる心憎い演出であった。他には燃料計と各種インジケーター類がビルトインされた丸型で見やい大型スピードメーター、φ200mmフロントディスクを採用。最低限の改良によってノスタルジー感溢れるルックスを残しつつも、時代に合わせた排ガス規制への対応と合わせてしっかりと現代的な交通事情でも問題なく走れる仕様となっていた。




 そんなPXが世界中のファンを惹きつけてやまない理由として考えられるのが、変わらないという安心感につきるのではないだろうか。なにしろPの販売開始から40年、ほぼ同じルックスを保っているのがPXだ。変化のないことをツマラナイと思う人もいるだろうが、ベスパのファンからすればいつ見ても、どこで見ても、同じベスパだという安心感が大きいのだと思う。


 それにスチールモノコックボディはサビたり凹んだりすることはあっても、軽く頑丈で基本的に長持ちだ。なのでずっと乗り続けられ、愛着もわきやすい。しかも構造がカンタンで部品点数も少ないため、自分で整備や修理が可能な点も歓迎される要因だろう。




 ちょっとほかのスクーターとは違うところばかりの気もするが、それでも40年間世界から愛され続けたPXだけに、たとえ新車で買えなくなったとしても変わることなくずっと愛され続けていくに違いない。

最終モデル ディテール解説

マルチリフレクタータイプのヘッドライトを採用した点が、息の長いPXシリーズの改良点の1つだ。レンズカットのないモダンな印象もさることながら、安全面での効果が大きな変化だといえる。

左サイドにフロントフォークの見えない状態が、ベスパの画期的なアイディアの1つだった片持ち式サスペンションだ。タイヤ交換のしやすさがメリットで、右サイドにはディスクブレーキを装備している。

縦に速度計と燃料計をレイアウトしただけという、とてもシンプルな丸型メーターパネルを採用。インジケーターもハイビーム、ウインカー、燃料警告などが並ぶだけで見た目にもすっきりした印象。

シート前方下部にコック類をまとめて配置。上から順に荷掛けフック、燃料コックレバー、2ストオイル残量確認窓(下側の右)、チョークノブ(下側の左)。ちなみに2stオイルもガソリンもシート下に入れ口あり。

ハンドチェンジ機構は、バイクのように左レバーでクラッチを操作。そのままグリップを回転させるように動かして、グリップ根本のインジケーターでシフト位置を確認しながらシフトチェンジするというもの。

息の長いPXでは、シートも改良点の1つとなっている。ライダーのヒップポイントが決まりやすい形状へと見直され、少し下げられた座面形状で足つきもわずかながらに向上している。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ♯2 手でギヤチェンジするベスパPX。その新車がもうすぐ(日本でも海外でも)買えなくなるという事実