ロバートボッシュとの術援助契約のもと、わずか四年というスピードで量産へとこぎつけた、デンソー製スパークプラグの第一世代製品であるP2プラグ。当初の目標は品質と量産性の両立であった。

1949年に自動車用の電装品を手がけるメーカーとして創業したデンソー。その同社が予混合火花点火であるガソリンエンジンに必要不可欠なスパークプラグの生産を始めたのは1959年のこと。それから60年目となる現在に至るまでに生産されたスパークプラグの数は実に60億本、その間に生産技術はもちろんのこと、エンジンの技術的要求に答えるかたちで基本性能にも磨きをかけるべく、意欲的に技術開発が積み重ねられてきた。




デンソーブースの中心に据えられていたのが、このプラグ生産における記念的節目にあたって、その歩みをひもとくというディスプレイボード。ゼロベースからのスタートにあたり1955年にロバートボッシュとの間で結ばれた技術援助契約のもとで開始された黎明期の研究開発の結晶として、そのわずか4年後に量産へとこぎつけることとなった第一世代の製品であるP2プラグ(トヨタ クラウンに採用)から、1970年代に始まった排出ガス規制への対応から着火性向上の取り組み、電極材への白金材料の採用によりさらなる着火性能の向上を果たしながら寿命を大きく伸ばした1980年代、そして中心電極にイリジウム合金を用いる現在の技術に至るまでが、各時代の製品を展示しながら、わかりやすく解説されていた。




そして、興味深かったのがエコキュートの展示だ。無知な筆者は「なぜ住宅設備が?」と思ってしまったのだが、実は電気を用いて効率的にお湯を沸かすという、エコキュートの中核をなす技術である、CO2(自然冷媒)を冷媒とするヒートポンプは、デンソーの車載用技術から生まれたもので、このシステムが登場した当初は、住宅設備を扱う各社から発売される製品に組み込まれる同システム部のすべてデンソーが手がけていたという(開発は東京電力と電力中央研究所との三社共同)。それまでになかったこのシステムが登場(商品化は2001年)してきた背景には、デンソーが自動車という競争の激しい世界で培ってきた技術が生きている。

1970年代に始まった排出ガス規制に伴う混合気のリーン化(燃料混合比の抑制)傾向から要求の高まった着火性の向上への取り組みから生まれたワイドUプラグ。外側電極(接地電極)の内側に溝が刻まれ、U型の断面形状を形成。着火性の向上において問題となる消炎作用を最小限に抑えることに成功した。

国産スパークプラグとして初めてグラスシールを採用したP3プラグの広告やパンフレット。いずれも同製品が発売された1962年当時のものだ。

デンソーから発売されているエコキュート。この手の製品としては唯一、屋外用の給湯口を装備。現在広く普及を遂げたエコキュートは、デンソーの車載用エアコン技術の研究から生まれたものだ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スパークプラグの生産開始から60年目のDENSO、その歩みをひもとくディスプレイを展開【東京オートサロン2018】