株式会社ジェイテクトは、電磁石の吸引力を利用することで工作機械主軸の静止時のみならず回転時の特性(剛性・固有値)の測定が可能なシステムを開発した。これは、あらゆる主軸姿勢に対応可能。本システムは同社のオンリーワン技術であり、出荷時の予圧状態や主軸特性を定量的に把握することで、主軸の信頼性の向上、開発の効率化、性能の経時変化の見える化に貢献する。将来的には、測定データを利用して「主軸の異常診断」や「加工条件の最適化」を支援するツールとしての活用を目指しさらなる開発を進めていくという。

工作機械は「機械を作る機械」という意味で「マザーマシン」と呼ばれ、日本の製造業を支える重要な基盤産業として発展してきた。工作機械の更なる発展のためには、その性能を左右する最重要ユニットの一つである主軸の性能や信頼性の向上が必要不可欠であり、なかでも主軸用軸受がとりわけ重要な役割を担っている。




主軸性能に大きな影響を与える因子として、「軸受の予圧」がある。予圧が大きくなると主軸の剛性は高くなるが、高速性、発熱、寿命などの点において不利になる。逆に予圧が小さくなると高速性、発熱、寿命などの点において有利になる一方で、剛性は低下する。性能ばらつきの少ない主軸を製作するためには「予圧のばらつき」を小さくすることが有効。予圧の管理項目の測定はいずれも静止時の主軸に対して実施されるのが一般的だが、本来、加工中の主軸は高速で回転しているので、主軸特性の評価は回転中に実施されるべきであると考え、本システムの開発に着手したという。

固有値の測定事例 ~主軸角度・回転速度の影響~
ラジアル方向での剛性特性測定例


特長として、(1)主軸静止時の剛性、固有値の測定が可能、(2)主軸回転時の剛性、固有値の測定が可能、(3)回転中の剛性を把握することにより、最適加工条件の検討を支援──の3つが挙げられる。




仕組みとして、電磁石の吸引力を利用して主軸先端に取付けたアーバー(疑似的工具)を異なる周波数で加振し(ラジアル、アキシアル両方向の加振が可能)、その時の変位をセンサで検知する構造にしており、静止時は当然のこと、回転中の工作機械主軸の特性(剛性・固有値)が測定できる。これにより、「予圧管理への適用による主軸性能の均一化への貢献」や「主軸特性の変化(例:出荷時と3年使用後)の有無の把握」が可能になる。将来的には「主軸の異常診断」や「最適加工条件の検討」の支援ができる可能性もあるという。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ジェイテクト:工作機械主軸ユニット剛性測定システムを開発