魅力的なパフォーマンスを実現するにも優れたシャシーがなければ不可能。新型コンチネンタルGTのシャシーは、当然ながら前作を遥かに上回るよう、様々なアプローチが採られている。ここでは、その詳細に迫る。




TEXT◎大谷達也(Tatsuya OTANI)

【動画】新型コンチネンタルGT ボディ構造

新型コンチネンタルのシャシー開発は、極めて明快なロジックで進められた。それをひと言でいえば、基本的なハードウェアを磨いて優れたスポーツ性能を獲得する一方、それらを広範に調節する電子制御を盛り込んで圧倒的な快適性も両立する、となる。




その顕著な例がエアサスペンションに新たに採用された3チャンバー式エアスプリングだ。エアサスペンションの基本原理は、スプリングとして作用する空気の量を増減させることでバネ定数を変化させ、様々な路面コンディションやドライビングスタイルに対応させることにある。ここでバネ定数の変化幅を広くとりたいのであれば、空気を増減できる量を拡大するのがいちばんの近道。新型コンチネンタルGTの3チャンバー式エアスプリングは、まさにこの目的で開発されたといっていい。




“3チャンバー式”のチャンバーとはエアスプリングを構成する空気室のこと。3つの空気室を備えた3チャンバー式エアスプリングは従来のシングルチャンバー式に比べて空気量を60%も増大。さらに使用する空気室の数を可変させてバネ定数の調整範囲を拡大することで、スーパースポーツカーのようなダイナミックな走りからリムジンのように滑らかな快適性までを実現した。まさに新型コンチネンタルGTにうってつけのシステムである。

【動画】新型コンチネンタルGT サスペンション

電子制御式エアサスペンションを側面からサポートするのが電動アクティブコントロール技術のベントレー・ダイナミック・ライドである。左右輪を結ぶアンチロールバーに電動式ロータリーアクチュエーターを内蔵したこのシステムは、ダイナミックな走行では左右輪を硬く結んでロール剛性を高め、コーナリングに伴うボディの傾き(ロール)を最小限に留める一方、高いロール剛性が不要なときは左右輪の結びつきを緩くして各輪が自由にストロークするのを助け、乗り心地を改善するものだ。




このダイナミック・ライドは、専用のコンバーターによって一般的な12ボルトから48ボルトに昇圧された電源を用いる。電圧は水道の水圧にたとえられるもので、電圧が高ければ高いほど素早く大きなエネルギー(水道でいえば大量の水)が得られる。ちなみに電動アクティブロールコントロールに用いられたアクチュエーターは0.3秒で最大1300Nmもの強大なトルクを発生できるので、これだけのトルクがあれば瞬時にボディの姿勢を整えるのは容易といえる。




また、ステアリング系には電動パワーアシストを採用。路面から伝わる不快な振動をシャットアウトする一方で、適切なフィードバックをドライバーにもたらす理想の制御が行なわれる。同じくステアリング系には可変レシオを採り入れることで、低速域では素早いレスポンスを、高速域では優れたスタビリティを実現したという。

新型コンチネンタルGTは4輪のトルク配分やブレーキ制御でステアリング特性を調整する機能も得た。一般的にいって、コーナリング中は前輪へのトルク配分を増やせばアンダーステア傾向を、後輪へのトルク配分を増やせばオーバーステア傾向を示す。また、コーナリング時にクルマが内側に回り込もうとする力(これをヨーモーメントという)は、コーナーの内側にあたるブレーキを軽くつまむことでも制御できる。このように、新型コンチネンタルGTは、様々な可変要素を適切にコントロールすることで、理想的なハンドリングや快適極まりない乗り心地の両立を追求したのである。




これらの制御要素はドライビングモード切り替えによって一括設定される。用意されたドライビングモードは、ワインディングロードでのダイナミックな走りにマッチする“スポーツ”、リムジン並みの快適性が楽しめる“コンフォート”、ベントレーのエンジニアがスポーツとコンフォートをバランスよく組み合わせた“ベントレー”、そして個々の制御要素を自分の好みにあわせて設定できる“カスタム”の4種類。これらを駆使すれば、どんなときでも至上のシャシー性能が手に入るはずだ。




ちなみに新型コンチネンタルGTは同じフォルクスワーゲン・グループ内のポルシェが中心になって開発したスポーツカー用プラットフォームのMSBを用いる。これも新型コンチネンタルGTのスポーツ性能の高さを示すものだが、ベントレーはベースとなるプラットフォームの82%をモディファイ。ここでも、スポーティなハードウェアをベースにして快適性をプラスするという手法は実践されたといえるだろう。

【SPECIFICATIONS】


ベントレー コンチネンタルGT


■ボディサイズ:全長4850×全幅1954×全高1405㎜ ホイールベース:2851㎜ ■車両重量:2244㎏ 前後重量配分:55:45 ■エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ 総排気量:5950cc ボア×ストローク:84×89.5㎜ 圧縮比:10.5 最高出力:467kW(635ps)/6000rpm 最大トルク:900Nm/1350〜4500rpm ■トランスミッション:8速DCT ■駆動方式:4WD ■サスペンション形式:Fダブルウイッシュボーン Rマルチリンク ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ディスク径:F420×40 R380×30㎜ キャリパー:F10ピストン R4ピストン ■タイヤサイズ:F265/40ZR21 R305/35ZR21 ■パフォーマンス 最高速度:333km/h 0→100km/h加速:3.7秒 ■環境性能(EU複合) CO2排出量:278g/km ■車両本体価格:2530万円(税込)
New BENTLEY CONTINENTAL GT

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情報提供元: MotorFan
記事名:「 【連載】新型コンチネンタルGT 完全解説⑤シャシー編 《動画あり》