本研究では、自己免疫性小脳失調症の原因となる抗体であるmGluR1*⁸抗体が陰性で亜急性に進行する小脳性運動失調症例162例、及び神経疾患コントロールとして78例の神経変性疾患例を対象としました。また、Sez6l2抗体の陽性判定はSez6l2タンパク質をHEK293T細胞株に過剰発現させ、cell based assay法*⁹と免疫ブロット法*¹⁰で判定を行いました。またcell based assay法では、IgGサブクラスを検討するために、IgG1とIgG4でも免疫染色を行いました。さらに、ラットの小脳切片を用いて組織染色も行いました(図2)。なお本研究は、北海道大学病院自主臨床研究審査委員会で審査され、承認を受け実施しています(019-0262)。
【研究成果】
判定の結果、新たに2例のSez6l2抗体陽性例を確認しました。また、そのIgGサブクラスはIgG1に加えIgG4が関与していることを示しました。また、原因不明の小脳性運動失調症の場合、本邦における代表的小脳性運動失調症である多系統萎縮症*¹¹(multiple system atrophy:MSA)の初期段階にある可能性がありますが、長期にわたる臨床経過を解析することで、Sez6l2抗体陽性例はMSAとはその臨床経過と脳MRI*¹²所見が異なることも示しました。またSez6l2抗体陽性例においては、小脳性運動失調の他に精神症状や認知機能低下を認める例も存在することを示しました。