インフルエンザウイルス感染後に起こりやすい細菌性肺炎を予防できる可能性を示唆

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)と昭和大学(学長:久光 正)医学部微生物学免疫学講座(教授:伊與田 雅之)は、乳酸菌Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1(以下、OLL1073R-1株)が産生する多糖体※1(以下、R-1 EPS)が、ヒト肺上皮由来培養細胞においてインフルエンザウイルスの感染の抑制と、インフルエンザウイルス感染後に起こりやすく、重度の肺炎の原因にもなる細菌の二次感染※2リスクを軽減することを確認しました。当研究成果は、2022年11月13日に第69回日本ウイルス学会学術集会にて発表しました。なお、本研究は、科学雑誌「Letters in Applied Microbiology」に掲載されました※3。

研究概要
 当社は、これまでにOLL1073R-1株で発酵したヨーグルトについて、風邪罹患リスク低減効果※4やインフルエンザウイルスに反応する唾液中IgA抗体量の増強効果※5などを確認してきました。インフルエンザウイルスは呼吸器に感染することで高熱・咽頭痛などの症状を引き起こしますが、本感染をきっかけに細菌感染を引き起こし(二次感染)、重度の肺炎になることがあると報告されています。
 本研究では、R-1 EPSがインフルエンザウイルスの感染抑制と、さらに感染をきっかけに発症しやすい肺炎の原因にもなる黄色ブドウ球菌による二次感染リスクを軽減することが明らかとなりました。これにより、R-1 EPSがインフルエンザウイルス感染ならびにその後の細菌性肺炎を予防できる可能性が示唆されました。

R-1 EPSの可能性
 第76回日本栄養・食糧学会大会および第18回日本食品免疫学会学術大会にて、ヒト肺細胞を用いたモデル試験において、R-1 EPSによるヒトコロナウイルス229Eおよび新型コロナウイルスの感染抑制効果※6を発表しております。これらの研究により、R-1 EPSはインフルエンザウイルスや各種コロナウイルスなど、さまざまなウイルスの感染を抑制する可能性が示唆されました。
 当社は今後もヒト試験および実験的感染モデルでの検証を通じて、免疫増強効果などを明らかにし、日常からの感染予防、健康維持増進に寄与する研究を継続してまいります。

※1 多糖体:糖が鎖のようにつながったもの。菌が作り出す多糖体は菌体外多糖(Exopolysaccharides, EPS)という。OLL1073R-1株が産生するEPS(R-1 EPS)は、これまでにも免疫力の指標となるナチュラル・キラー細胞(NK細胞)の活性を高める働き、インフルエンザウイルス感染を抑制する作用など、さまざまな免疫作用が示されている。
※2 細菌の二次感染: インフルエンザウイルスなどのウイルス感染後に別の細菌(黄色ブドウ球菌や緑膿菌など)に感染すること。
※3 出展:Ishikawa H, et al. Lett Appl Microbiol, 74(5):632-639, 2022.
※4 出典:Makino S, et al. Br J Nutr, 104(7):998-1006, 2010.
※5 出典:Yamamoto Y, et al. Acta Odontol Scand, 77(7):517-524, 2019.
※6 2022年11月10日リリース:「OLL1073R-1株が作り出す多糖体「R-1 EPS」が自然免疫に作用、新型コロナウイルスの増殖を抑制することを細胞試験で確認」https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2022/1110_01/index.html
【概要】
R-1 EPSで刺激した免疫細胞の培養液をヒト肺由来培養細胞に加えて培養することで、新型コロナウイルスWuhan変異株(D614G株)およびオミクロン株(BA. 5株)、ヒトコロナウイルス229Eの増殖が抑制されました。

発表内容
【タイトル】
OLL1073R-1乳酸菌産生多糖体はインフルエンザウイルス感染予防効果を示し、さらに細菌二次感染を軽減する

【方法と結果】
 R-1 EPSを添加、または添加なしで培養したヒト肺由来上皮培養細胞にインフルエンザウイルス(PR8株〔H1N1〕)を感染させました。感染後の細胞を6時間培養して細胞内ウイルス量を測定するとともに、肺炎の原因菌の一つである黄色ブドウ球菌が肺細胞に付着する際に利用する接着因子であるCEACAM-1※7の遺伝子発現量を解析しました。また、感染6時間後に実際に黄色ブドウ球菌の細胞付着実験を行い、以下の結果を得ました。

R-1 EPSを添加したヒト肺細胞では、
(1)インフルエンザウイルス感染後の細胞内ウイルス量が有意に減少しました(図1)。
(2)インフルエンザウイルス感染後のCEACAM-1の遺伝子発現量が有意に減少しました(図2)。
(3)黄色ブドウ球菌の細胞への付着数について減少傾向が認められました(図3)。

 R-1 EPSはヒト肺細胞において、インフルエンザウイルスの増殖の抑制と、接着因子の1つであるCEACAM-1の発現を抑制することで黄色ブドウ球菌の細胞付着を防ぎ、インフルエンザウイルス感染後の細菌性肺炎を予防できる可能性が示唆されました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301172169-O5-38j3nUk8
図1 ヒト肺細胞中のインフルエンザウイルス量

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301172169-O7-L68NB933
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202301172169-O8-y993aLA4
     図2 ヒト肺細胞のCEACAM-1発現量  図3 ヒト肺細胞に付着した黄色ブドウ球菌の数

※7 出展: Zhao J, et al. J Ethnopharmacol, 277:114066, 2021.

情報提供元: PRワイヤー
記事名:「 乳酸菌OLL1073R-1株が作り出すR-1 EPSのインフルエンザウイルス感染予防効果と二次感染リスク軽減を確認