地震保険の補償の「建物の時価額」は、保険代理店のブログ記事でさえも勘違いしてることがあります。

間違いのないよう解説します。

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地震保険の補償についての基本的事項は?

まずは、地震保険の補償について基本的事項を抑えておきましょう。基本的には下図のような内容になっております。

≪画像元:損害保険料率算出機構

上図のように、損害程度の判定は4つしかありません。

詳細は上図を見ていただくとして、おもに主要構造部(壁、柱、床など)の損害程度認定基準等によって、

  • 全損、大半損、小半損、一部損のいずれかに該当する場合に、

その判定に合わせて損害保険金が支払われることになります。(地震保険金額の100%、60%、30%、5%

地震保険では火災保険のように実際の損害額から計算されるわけではなく、損害の程度の判定によって損害保険金が支払われることを覚えておいてください。

建物の時価額の認識についての勘違いとは?

地震保険の補償について上図をもとに説明していると

「損害保険金は時価額が限度(図の赤線部分)ってなっていますが、築25年とか30年になったら時価額がゼロ近くになってしまうのでほとんど出ないってことですか?」

と聞かれることがあります。

これは、建物の時価額について不動産売買における評価額や税法上の未償却残高、固定資産税評価における減点補正などと同じで、

  • 建物評価額がゼロになる
  • 新築時の10%~20%になる

などだと勘違いされていることが原因だと思います。

地震保険における建物の時価額とは、これらで行う評価額とは異なる考え方になります。

地震保険における建物の時価額とは?

地震保険における建物の時価額は、下記のように定義されてります。

建物時価額 = 再調達価額※1(新価) - 経年劣化・使用による価値減少分(損耗分※2)

※1 再調達価額とは、保険の対象(建物、家財など)と同等の物を、新たに建築または購入するのに必要な金額(再取得費相当額)のことをいいます。

※2 損耗分については、1-残価率(残価率表より)

上記式中の損耗分についてですが、損害保険会社の規定によれば、

「適切な維持管理が施されており、実際に居住されている建物であれば、時価評価額は新価評価額の50%と同じかそれ以上と見なします。」

とされておりますので、損耗分が50%を超えることがなく、保険会社の残価率表をみても残価率が50%を下回ることがないようになっています。

建物の時価額が50%未満になることはないということです。

建物の時価額が50%未満にならないなら損害保険金算出に悪影響はない

建物の時価額が50%未満にならないなら、地震保険における損害保険金算出において悪影響はありません。

地震保険金額は火災保険金額の30~50%の範囲で設定するルールになっていますので、火災保険金額設定の際に再調達価額(新価)の100%で火災保険金額を設定していれば問題は起きないのです。

例:築35年で地震により全損判定となった場合

新築時木造3,000万円(新価も3,000万円)の建物に、
  • 火災保険金額3,000万円
  • 地震保険金額1,500万円
の火災地震保険に加入(その後火災地震保険とも、しっかり継続加入)
築35年(残価率50%)の時点で地震に罹災して全損判定となった。

地震保険の損害保険金は?

適切な維持管理が施されており、実際に居住されている建物であれば、損耗分を差し引いても建物時価額は1,500万円(残価率50%)となります。
よって、時価額が地震保険金額1,500万円を下回ることはありませんので、損害保険金1,500万円が支払われることになります。
  • 「適切な維持管理が施されており、実際に居住されている建物であること」と、
  • 「火災保険金額の設定に問題がないこと」

が確認されれば、問題は起きません。

火災地震保険加入時にこの事だけはしっかり押さえておきましょう。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)

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情報提供元: マネーの達人
記事名:「 地震保険の損害保険金は築35年だと出ないの? 勘違いしやすい「建物の時価額」のポイント解説