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老後資金の備えはどれが正解? iDeCo・NISA・個人年金保険のメリットデメリットから「優先順位」を教えます
報告書の中に登場している、平均的な高齢夫婦無職世帯の1月あたりの実収入と実支出は、総務省が実施している2017年の家計調査を元にしております。
一方で2020年の家計調査を元にした、平均的な高齢夫婦無職世帯の1月あたりの実収入と実支出は、次のような金額になります。
・1月あたりの実収入:25万6,661円
・1月あたりの実支出:25万5,550円
2017年は「実収入<実支出」になっておりますが、2020年は「実収入>実支出」になっているのです。
つまり2020年は実収入で実支出を賄えているため、赤字が発生していないどころか、1,111円の黒字が発生しているのです。
また黒字であれば赤字を穴埋めするために、金融資産を取り崩す必要はありません。
そのため多くの国民を悩ませた老後2,000万円問題は、いつの間にか消滅していたのです。
2020年の始め頃から、現在も問題になっている新型コロナの、感染拡大が始まりました。
これを受けて家計を支援するための特別定額給付金(1人10万円)が、同年5月頃から支給され始めました。
このような新型コロナ対策の各種の給付金が、2020年の実収入を引き上げした可能性があります。
また感染拡大を防ぐために自粛生活を続けたことが、2020年の実支出を抑えた可能性があります。
そうなると老後2,000万円問題の消滅は一時的なものであり、新型コロナの問題が終息したら、復活するかもしれません。
ただ一時的であったとしても、大きな話題になった問題が消滅したのですから、マスコミはもっと報道すべきだと思うのですが、あまり報道されていないのです。
老後2,000万円問題が発生した後の状況を見てみると、iDeCoやNISAの新規加入者が増加したため、金融業界は多かれ少なかれ、恩恵を受けたと思います。
もし老後2,000万円問題の消滅が周知された場合、新規加入者の増加にブレーキがかかる可能性があるため、金融業界がスポンサーになっているマスコミは報道に対して、消極的になったのかもしれません。
あくまでも個人的な推測に過ぎませんが、この推測が当たっているとしたら、老後2,000万円問題の消滅は金融業界にとっての、不都合な真実だと思います。
税制優遇が非常に大きいため、他の制度より金融資産を貯めやすいiDeCoやNISAは、老後2,000万円問題が消滅したとしても、次のような3つの理由により、これからも活用した方が良いと思います。
老後2,000万円問題が発生した時に、この金額では足りないと主張する方がおりました。
その理由として住宅のリフォーム代、葬儀費用、医療や介護に関する一時的な費用(例えば介護施設に支払う入居一時金)などは、2,000万円の中に含まれていないからです。
こういった一時的な支出を賄うために、まとまった金融資産が必要になるため、iDeCoやNISAを活用した方が良いのです。
2017年と2020年の実支出の内訳を見てみると、住居に関する支出は両者とも、1万円くらいしかないのです。
おそらく無職の高齢夫婦は、住宅ローンの支払いが終わった持ち家に、住んでいる場合が多いからだと思います。
そのため賃貸に住んでいる方や、高齢になっても住宅ローンの支払いが終わらない方は、これらを賄うための金融資産を準備しておく必要があるため、iDeCoやNISAを活用した方が良いのです。
公的年金の支給額は年々減っているため、実収入で実支出を賄うのは難しくなっていきます。
また退職金の支給額も年々減っているため、実収入から実支出を差し引いた時に生じた赤字を、退職金で穴埋めするのも難しくなっていきます。
そうなると公的年金や退職金が減額した分を、補うための金融資産が必要になるため、iDeCoやNISAを活用した方が良いのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)
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