*15:19JST クリアル Research Memo(9):「CREAL」の高成長を軸として大幅な業績拡大と高成長が続く見通し(2) ■クリアル<2998>の今後の見通し

2. サービス別の見通し
(1) 「CREAL」
「CREAL」の進捗率は、売上高で32.2%、売上総利益で50.6%となっている。また、ファンド組成も着実に進捗しおり、累計獲得GMUは50.9%、組成件数は17件と、過去最大を記録している。

a) ファンドの運用状況
ファンド償還は物件の外部売却が主なトリガーとなるため、この数値は「CREAL」のサービスの売上額に直結する。「CREAL」の売上高はこの外部売却金額に加え、ファンドに関する組成手数料や管理手数料などから構成される。

2024年3月期第2四半期にはレジデンス2件、商業施設1件のファンドの償還を実施したが、これに加え、商業施設2件、保育園2件、レジデンス23件を運用中で、残高は14,600百万円に及ぶ。これが2024年3月期中に売却する可能性がある売却予備軍のパイプラインという位置付けであることから、売上高の通期予想達成は十分可能と考えて良いだろう。

b) IT投資
不動産特定共同事業法に基づく第3号及び第4号事業者としての許可取得によるSPCを活用したクラウドファンディング開始を見込み、ファンドシステムの開発に着手している。3号4号ファンドは従来の1号2号ファンドとは商品スキーム等が大きく異なることから、事業者としての許可を取得後すぐにサービスを開始できるようにすることがねらいである。

c) ESG不動産投資の積極展開
個人投資家に直接アプローチできるクラウドファンディング型不動産投資の特長を最大限に活用することで、投資規模が小さくトラックレコードが少ないという理由から、従来の投資ファンドでは投資が進んでいなかったESG不動産投資の促進を図り、経済的リターンと社会的課題解決の両立を目指している。2022年3月期の4件のESG不動産投資に続いて、2023年3月期は学校法人正和学園とのアライアンスによる東京外国語大学内保育園プロジェクト(1.7億円)、(株)MIRATZとのアライアンスによる認可保育園プロジェクト(2.7億円)のESGプロジェクト2件を組成しており、それぞれ20秒、30秒程度で満額申し込みを達成した。

(2) 「CREAL PB」
「CREAL PB」の進捗率は、売上高で46.3%、売上総利益で44.2%とおおむね順調に推移している。組織の拡大に加えて、DXプラットフォームの継続的進化によるさらなる利便性の向上と、管理業務の効率化を進める計画である。併せて「CREAL buyer」でAIを活用した主力の都心区分レジデンスの拡充を強化し、再生可能エネルギー施設や「CREAL」「CREAL PRO」で運用中の1棟レジデンスについても商品ラインナップに加える方針である。これまでの区分レジデンス投資だけでは難しかった多様な投資家ニーズに対応し、投資機会拡大による高成長を計画している。また、昨今の円安により投資ニーズが増大している海外投資家向けの販売も強化している。

(3) 「CREAL PRO」
「CREAL PRO」の進捗率は、売上高で31.7%、売上総利益で63.4%となっている。今後の成長戦略として、これまでにも増して「CREAL」「CREAL PB」とのシナジーを強化する方針である。具体的には、「CREAL」で運用している小~中規模物件のポートフォリオを50~100億円程度の規模に束ねて、「CREAL PRO」の顧客である機関投資家や金融機関等へバルクセールする。さらに対象の物件管理については「CREAL PRO」でアセットマネジメント業務を受託する。これにより同社サービス間のシナジーを発揮できるビジネスモデルの強化・拡大を推進する。また、「CREAL PB」の主な顧客である富裕層に対して、資産規模や投資方針に沿ったプロ向け運用サービス「CREAL PRO」をクロスセルしていく計画である。

トピックスとしては、2023年11月に、アジアを拠点にしたグローバル展開を見据え、同社の100%子会社として、CREAL ASIA Pte Ltdをシンガポールに設立した。シンガポールは面積こそ東京23区と変わらない程度だが、日本の数倍から20倍の割合で富裕層が存在しており、またそうした富裕層に対応すべく投資運用会社のファンドマネージャーも年々増加の一途を辿っている。アジアトップの金融ハブとして近年成長している国であることから、各サービスのアジアでのより加速度的な成長を目指す考えである。

まずはシンガポールを中心としたアジアの投資家向けに「CREAL」のファンド償還時の売却を推進するほか、ファンド償還後のアセットマネジメント業務の受託(「CREAL PRO」)、「CREAL」向けに利益率の高い海外案件のソーシング、クラウドファンディングシステムのアジア展開などを予定している。

同社はDXの介在とシェア拡大の余地が大きい「CREAL」の成長を最優先しているため、「CREAL」に比べて「CREAL PRO」に対する注力度は相対的に低いように見受けられる。しかしここにきて、「CREAL」のファンド投資総額の急拡大が国内外の大手不動産ファンドの注目を集めており、「CREAL」の高成長ポテンシャルが「CREAL PRO」へと波及し、引き合いが活発化しているようだ。将来に向けた「CREAL PRO」の成長ポテンシャルは当初の想定以上に大きく拡大しているものと弊社では推察している。

このビジネスモデルは、高成長を続ける「CREAL」において安定的な物件売却先を確保できるうえ、「CREAL PRO」にとっても安定的なフィービジネス獲得の機会となる。さらに「CREAL」の高成長ポテンシャルが「CREAL PRO」に波及することで、「CREAL PRO」の成長力を大きく高めるサービス間バリューチェーンの創出が可能となる。弊社では、同社の事業全体の高成長と経営基盤の拡大に、さらに大きく貢献する成長戦略として期待している。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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情報提供元: FISCO
記事名:「 クリアル Research Memo(9):「CREAL」の高成長を軸として大幅な業績拡大と高成長が続く見通し(2)