■業績動向

2. 2022年3月期の業績見通し
早稲田アカデミー<4718>は8月25日付で2022年3月期の連結業績を上方修正している。売上高は前期比11.5%増の28,370百万円、営業利益は同49.5%増の1,591百万円、経常利益は同47.3%増の1,587百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同75.0%増の925百万円とし、売上高で期初計画を2.7%、各利益で30%超修正している。

期中平均塾生数については前期比11.7%増とし、期初計画から1.0%引き上げた。生徒1人当たり売上単価についても第2四半期までのトレンドが下期も継続すると見て、1%強引き上げている。ただ、9月以降も公式HPからの問い合わせ件数は前年同期比2割超と好調なペースが続いていることから、塾生数については計画をやや上回る可能性が高い。また、費用面でも下期に広告宣伝費を積み増す予定にしているが、そのほか特段の費用増要因は見当たらず全体的には保守的な印象が強い。冬期講習についても申込みが順調に推移していることから、今後コロナ禍の状況が再度悪化し、生徒募集活動に支障が出るようなことがなければ、業績は計画からさらに上振れする可能性が高いと弊社では見ている。

なお、通期計画に対する第2四半期までの進捗率は売上高で48.3%、営業利益で57.7%となっている。コロナ禍の影響を受けていない過去3期間(2018年3月期~2020年3月期)の平均進捗率を見ると、売上高で49.0%、営業利益で49.0%となっており、過去の傾向から見ても利益面では保守的な計画になっている。

(1) 生徒数の見通しと校舎展開
売上高の前提となる期中平均塾生数は、全体で前期比11.7%増を見込んでいる。このうち、主力の小学部は14.1%増と好調を継続する見通しだ。また、中学部が同9.7%増と3期ぶりの増加に転じるほか、高校部も同3.9%増と4期ぶりの増加に転じる見通しとなっている。高校部については前述のとおり1年生が増加に転じているほか来春の募集活動を強化することで、新規入塾生の増加を見込んでいる。ただ、高校部についてはややハードルが高い印象で、小学部や中学部の上積みによってカバーする格好になると見られる。売上高については、小学部が前期比14.1%増、中学部が同10.6%増、高校部が同4.3%増を見込んでいる。

下期の出校予定としては早稲田アカデミー、早稲田アカデミー個別進学館で各1校、子会社で1校を計画している。いずれも物件については確保しており、3月頃の開校を予定している。2022年3月期の業績への影響は軽微だが、翌期以降に貢献することになる。

(2) 早稲田アカデミー個別進学館事業の成長加速に向けた体制整備
同社は10月29日付で明光ネットワークジャパンとの資本業務提携の解消と合わせて個別進学館の株式取得(子会社化)を発表している。従来、両社で展開してきた早稲田アカデミー個別進学館事業について、事業の成長加速を図るため同社で一本化して展開していくこととなった。2021年11月末に明光ネットワークジャパンが事業分割会社として設立した個別進学館の全株式を700百万円で購入する予定だ。同社の業績には、第4四半期以降に反映されることになる。

明光ネットワークジャパンの個別進学館事業の業績は、2021年8月期で売上高620百万円、営業利益31百万円となっている。同社はロイヤリティを一部支払っていたため単純に上乗せされることにはならず、利益面ではロイヤリティ支払いが無くなることもあり、寄与度は若干大きくなるようだ。ただ、一方でのれん償却額も発生する見込みであることから、当面は利益面での影響は軽微になると思われる。

同社では個別進学館事業について首都圏100校体制を目標としてきたが、今回の事業統合により、新規出校やプロモーション施策などの経営の意思決定が早まる効果が期待され、2023年3月期以降の成長加速が期待される状況になったと言える。2021年9月時点で校舎数は同社直営校が29校、子会社化を予定している個別進学館が直営12校とFC15校の合計56校体制で、生徒数は約5千名規模となる。今後は直営が中心になると見られるが、FC展開についても継続していく予定となっている。

同社が個別進学館事業に注力する理由は、顧客LTVの最大化にある。難関志望校合格を目指すための個別指導塾は苦手科目を克服するために利用する生徒が多く、集団塾と掛け持ちで利用する生徒も一定割合で存在している。早稲田アカデミーの場合で言うと、近隣に立地している早稲田アカデミー個別進学館の生徒のうち、早稲田アカデミーに通塾している生徒は平均して3割強を占めていると言う。近隣に早稲田アカデミー個別進学館がないところについては、その他の個別指導塾に生徒が通っていることになり、こうした場所に早稲田アカデミー個別進学館を開校することで、LTVの向上につなげていく戦略となる。現在、首都圏に早稲田アカデミーは115校あり、早稲田アカデミー個別進学館についても将来的に同規模まで校舎を開校していくことは理に適っていると言え、2023年3月期以降の展開が期待される。


中期業績目標を1年前倒しで達成するペースで、今後適切なタイミングを見て修正発表する見通し
3. 中期経営計画
同社は2021年1月に4ヶ年の中期経営計画を発表した。「子どもたちの未来を育む 独自の価値を提供し続け 教育企業No.1を目指す」ことを企業目標とし、合格実績戦略を基本戦略として推進していく計画だ。合格実績戦略とは、「本気でやる子を育てる」という同社の教育理念を徹底実践することを起点に、生徒の本気を引き出す授業によって成績向上と志望校への合格を実現し、その結果、顧客満足度を高めて地域での評判を獲得し、塾生数の増加によって収益を拡大していくというもので、これまで同社が継続して取り組んできた戦略となる。

業績数値目標については、2021年3月期の業績が計画を上振れて着地したことから、1月に発表した数値を5月に修正発表している。最終年度となる2024年3月期の売上高は290.8億円(当初277.0億円)、経常利益は17.1億円(同15.1億円)とし、過去最高業績を更新する見通しだ。ただ、既述のとおり2022年3月期業績についても8月に上方修正を発表しており、2023年3月期の目標値を1年前倒しで達成する見込みとなっている。このため、同社では今後のコロナ禍の状況なども踏まえ、2023年3月期の市場環境などを見極めたうえで、適切なタイミングで再度業績目標の修正発表をする意向を示している。特に、利益率に関しては当初目標を上回る改善を見せている。これは、DX化への取り組みを推進するなかで、業務効率化や生産性の向上が図れていることが要因と考えられる。

同社では、既存コア事業の強化に加えて、個別指導部門の成長加速化、オンライン校や英語ブランド校、海外直営校の展開など、新たな収益基盤の構築も進めていくことで中長期的に持続的な成長を目指していく方針で、今後の展開が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 早稲アカ Research Memo(3):下期も塾生数は好調を持続、2022年3月期業績は保守的な印象で上振れ余地あり