■業績動向

1. 2020年3月期の業績動向
ディーエムソリューションズ<6549>の2020年3月期の業績は、売上高13,433百万円(前期比10.3%増)、営業利益212百万円(同29.4%減)、経常利益212百万円(同29.0%減)、当期純損失102百万円(前期は200百万円の利益)となった。国内経済は、雇用・所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続いたが、米中貿易摩擦や年明け以降の新型コロナウイルスの感染拡大により、先行き不透明な状況となった。こうした状況のなか、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が特に年度末の3月に顕著となり、一時的に業界環境が厳しくなることも想定される。

同社は、顧客企業のニーズに対して最適なソリューションを提供する一方、人材の採用、営業力・サービスの強化のための投資を積極的に行った。この結果、売上面では、ダイレクトメール事業で第4四半期に新型コロナウイルスの影響を受けたものの、インターネット事業が新規メディアの投入もあって大幅に伸び、堅調な推移となった。しかし利益面では、インターネット事業で計画通り成長投資を行ったことで減益となった。なお、期初予想に対して売上高で561百万円、営業利益で57百万円の未達となっている。これは、ダイレクトメール事業で新型コロナウイルスの影響で期末に向けて一部予定していたダイレクトメールにキャンセルが出たこと、インターネット事業で自動車情報メディア「MOBY」へのサイト訪問者が想定より少なく広告収入が予想に達しなかったこと、デジタルマーケティングサービスの販売が伸び悩んだこと——などが要因である。また、当期純損失は、特別損失で「MOBY」の減損損失を計上したことが理由である。


足を引っ張った新型コロナウイルス感染拡大と「MOBY」

2. セグメント別の動向
(1) ダイレクトメール事業
ダイレクトメール事業の2020年3月期の業績は、売上高11,778百万円(前期比8.9%増)、セグメント利益685百万円(同9.3%増)となった。企画制作からデザイン、印刷、封入・封緘などの作業を一括して手掛けるワンストップサービスの提供、郵便やメール便のスケールメリットを生かした提案型営業を積極的に展開、日野フルフィルメントセンターを中心に、市場の拡大が続いている宅配便など小口貨物の取扱いも強化した。この結果、新型コロナウイルスの影響により、年度末に多いセミナーやアパレルセール、大学のオープンキャンパスといったイベントの集客のためのダイレクトメールがキャンセルなどで苦戦したものの、売上の大半を占める定期発送物や通販向け小荷物発送にはほとんど影響が現れず、新規顧客の開拓も既存顧客の受注も順調で、売上・利益ともに堅調に推移した。

(2) インターネット事業
インターネット事業の2020年3月期業績は、売上高1,654百万円(前期比21.9%増)、セグメント利益115百万円(同40.7%減)となった。SEOと併せてコンテンツマーケティングに注力し、コンサルティング型マーケティングサービスの提供を強化、加えてSEOのノウハウとWebサイトのコンテンツ制作ノウハウを生かしてバーティカルメディアサービスにも注力した。外出自粛要請に伴い、ネット通販ニーズが高まり、インターネットの閲覧時間が伸びるなど「巣ごもり需要」が拡大し、自社バーティカルメディアの送客効果を促進した。特にウォーターサーバーや脱毛サロンなどの比較サイトが好調で、このためインターネット広告収入が増加した。一方、利益面で大幅減益となったが、のれん償却や広告宣伝などの先行費用、アルゴリズムへの対応、「MOBY」の苦戦で広告収入が想定ほど伸びなかったこと——が要因で、先行費用は成長企業として計画どおりの支出だったこと、更新されたアルゴリズムへの最適化には時間がかかることから、課題というより成長痛のようなものと理解できる。従って、最大の課題は「MOBY」ということになる。

2018年12月に事業譲受で得た「MOBY」は、かつてのカー雑誌のいいとこ取りをしたような電子媒体(自動車情報サイト)で、ピーク時の月間訪問者数が600万人を超えるなど、既に優良な広告媒体として広告収入を得ていた。ややピークアウト感はあったが、同社の有するインターネット広告やSEOのノウハウなどを利用すれば、さらに価値を高め、広告単価を引き上げ、新規広告主を開拓できると考えていた。しかし実際は、Googleのアルゴリズム更新に対して最適化する前に、新型コロナウイルスの影響で自動車広告市場自体が低迷してしまった。「MOBY」のサイト構造自体にも問題はあったが、このためアクセス数が大きく落ち、メディアとしての価値が毀損したのである。現在は既に減損が終わり、「MOBY」のチームを入れ替えて小規模化しサイトの構造を改良したので、収益化しやすい体質へと変わっているようだ。あとは、自動車広告市場の回復につれ、コストと集客のバランスを見ながら記事や周辺ビジネスを強化していく考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 ディーエムソリュ Research Memo(5):新型コロナウイルス感染拡大の影響もあった2020年3月期