■テラスカイ<3915>の今後の見通し

(2) プロダクトの拡充
自社開発製品として注力しているコミュニケーション・プラットフォーム「mitoco」についても、UIの改善やカレンダー機能の強化など利便性や機能の向上を図りながら、「働き方改革」を実現するツールとして拡販を進めている。2020年1月には弁護士ドットコム<6027>の電子契約サービス「クラウドサイン」との連携も開始した。両サービスのユーザーは、システムごとに分断されていた社内業務を「mitoco」に集約できるようになり、業務の効率化が図れることになる。たとえば、営業活動やスケジュール管理、契約業務とその社内承認を得るワークフロー申請やタスク管理などがすべて「mitoco」をプラットフォームとして実現できるようになる。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「はんこ文化」を見直す動きも拡がりつつあり、「クラウドサイン」の導入社数は現状の約6.5万社からさらに拡大することが見込まれる。「クラウドサイン」導入企業でSalesforceも導入していれば、「mitoco」を利用することでさらに業務効率の改善が図れることになるため、「mitoco」導入社数の増加につながる取り組みとして注目される。

なお、「mitoco」については新型コロナウイルス感染拡大に伴ってテレワークを実施する企業等を対象に、提供開始日から3ヶ月間の無償提供を行うことを3月末に発表しており(受付期間は5月29日まで)、合計で数十件の引き合いがあったもようだ。

導入企業数は順調に増加しているが、1ID当たり月額料金が700~800円と安価なこと、また、継続して機能拡充などの開発費を投下していることから利益貢献はまだしていないが、2021年2月期中には単月ベースでの黒字化を目指している。

(3) 新規事業の取り組みについて
中長期的な成長を見据えた取り組みとして、BtoB領域におけるクラウド関連のスタートアップ、アーリーステージ企業に対する投資・育成を行うテラスカイベンチャーズ、量子コンピュータを用いるビッグデータ解析などのアルゴリズム開発によるIP化とサービス化による収益獲得をねらうQuemix、東南アジア市場でのSalesforce導入支援や自社製品の拡販を目指すTerraSky(Thailand)の3つの子会社を2019年に設立した。

いずれも先行投資段階となるため、当面は利益面での貢献は見込んでいない。Quemixについては現在数名の優秀な研究者を集めて、大学などと共同開発を進めようとしており、人件費を中心に損失が続くものと予想される。利用価値の高いアルゴリズムの開発とライブラリー化による特許収入の獲得や、組み合わせ最適化※支援によって収益化を目指していく。

※膨大な組み合わせの中から最適な手法を見つけ出すソリューション。たとえば、勤務シフトや生産設備割り当てなどのスケジューリングや、物流現場におけるピッキング効率の良い棚配置や積載効率の良いトラックの利用法、移動経路を分散させることで渋滞をなくす経路最適化手法、異なる原料の組み合わせの最適化手法など。


タイの子会社については、現地企業でのSalesforceの導入・構築支援に向けて現地でエンジニアの採用・育成を進め、2022年に売上高で2億円、2023年に単年度黒字化を目指す。育成については日本で培った研修カリキュラムやOJTを実施していく。タイを進出拠点としたのは、高い経済成長と政局が安定していることなどに加えて、LINEの普及率が高く、自社開発の「OMLINE」シリーズの需要が見込め、顧客開拓が進みやすいと判断したためだ。タイで実績ができればベトナムやインドネシアなど周辺国にも事業を展開していく考えだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 テラスカイ Research Memo(10):Salesforceとの連携ソリューション拡充で年率30%売上成長(2)