■要約

イード<6038>は、Webメディア・コンテンツの運営を行うコンテンツマーケティングプラットフォーム(以下、CMP)事業と、リサーチ及びECソリューションを提供するコンテンツマーケティングソリューション(以下、CMS)事業を展開している。Webメディアに関しては事業取得や新規開発を進めながら、自動車、IT、エンターテインメント、暮らしなど幅広いジャンルを手掛け、2019年6月期末時点で21ジャンル59サイトを運営している。

1. 2019年6月期の業績概要
2019年6月期の連結業績は、売上高で前期比10.1%増の5,192百万円、営業利益で同20.9%増の310百万円と2ケタ増収増益となり、5月に上方修正した会社計画(売上高4,900百万円、営業利益300百万円)に対して上回って着地した。運営するWebメディア全体の月間平均PV数が同17.7%増と順調に拡大したことに伴い、ネット広告収入を中心にCMP事業の売上高が同13.0%増の4,397百万円、セグメント利益で同43.1%増の303百万円と大きく伸張したことが主因だ。

2. 2020年6月期業績見通し
2020年6月期は売上高で前期比2.1%増の5,300百万円、営業利益で同12.8%増の350百万円と増収増益が続く見通し。売上高についてはM&Aによる事業買収で追加されるWebメディアやコンテンツの影響を含んでいないことや、引き続き既存メディアのPV数も堅調に推移していることから、会社計画は保守的と見られる。CMP事業では増収効果による利益率上昇が見込まれるほか、CMS事業もECソリューションの受注回復により増収増益に転じる見込みとなっている。なお、同社は携帯電話販売で国内最大手のティーガイア<3738>及び出版社の(株)ポプラ社との間で資本業務提携を行うとともに、両社に対する第三者割当による自己株式処分を行うことを発表している(実施日は2019年9月4日)。調達資金471百万円は新規事業創出及び既存事業拡大のための投資資金に充当する予定となっている。両社とはそれぞれ5Gの高速無線通信インフラと同社のデジタルマーケティングノウハウを生かして、既存事業の拡大・深耕並びに新規事業の創出に向けた取り組みを推進していく予定となっている。

3. 今後の成長戦略
同社は今後も新規の事業開発や業務提携、M&Aを行いながら、「領域特化型メディアの拡大」×「多様なビジネスモデル」を掛け合わせて収益を拡大していく戦略となっている。特に、高成長が見込まれるMaaS※1やブロックチェーン、音声コンテンツ領域に関しては積極的な投資を継続していく方針だ。MaaSに関しては2017年に打ち出した「iid 5G Mobility」戦略(自動車業界における第5次モビリティ革命を支援する取り組み)に基づき、関連するベンチャー企業との業務提携や出資等を注力していく方針。また、ブロックチェーンについても2019年7月より、世界中のアニメファンがアニメ記事を翻訳するブロックチェーンプラットフォームの実証実験をTokyo Otaku Mode Inc.等3社と共同で開始しており、「アニメ!アニメ!」※2のグローバル版サイトを立ち上げている。音声コンテンツに関しては、AIスピーカの普及を見越して運営メディアの音声化に取り組んでおり、現在の11メディアから3年後に50メディアまで音声化に対応していく計画となっている。米国では音声コンテンツによる広告市場が拡大しており、日本でも早晩、同様に市場が立ち上がると見ている。

※1 MaaS(Mobility as a Service):代表例としてはカーシェアリングが挙げられるが、同社では新車販売からメンテナンス、給油、保険、中古車流通、リサイクルなど自動車に関わる既存のサービスを、ITを活用した利便性の高いサービスへと進化させたもの、また自動運転技術によって創出される新サービスを含めてMaaSと定義している。
※2 アニメを取り巻くビジネスや環境、文化、社会現象を含めた幅広いニュースを提供するメディア。


■Key Points
・2019年6月期はCMP事業の好調により売上高は過去最高を更新、利益も大幅増益を達成
・2020年6月期業績は、M&A効果を除いたベースで売上高2%増、営業利益13%増益となる見通し
・MaaS、ブロックチェーン、音声コンテンツ等の高成長が見込める領域に積極的な投資を行う

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



<SF>

情報提供元: FISCO
記事名:「 イード Research Memo(1):MaaS、ブロックチェーン、音声コンテンツ等に積極投資、収益拡大目指す