■事業概要

2. 調査パネルの状況
サービスのベースとなる調査パネル「GMOリサーチ・クラウド・パネル」は、日本国内に特化した消費者パネル「JAPAN Cloud Panel」と日本を含むアジア13ヶ国・地域の消費者パネル「ASIA Cloud Panel」からなる。各地域とも提携先である有力メディアとのシステム連携によるパネルネットワーク(Cloud Panel)を構築しているため、同業他社に比べて調査パネルの運営管理コストが低いことが大きな特徴となっている。

国内の調査パネルである「JAPAN Cloud Panel」は、GMOリサーチ<3695>が管理運営する「infoQ」※1と、提携先が保有する調査パネルを合わせて登録会員数が2018年4月時点で約1,144万人と国内最大規模となっており、提携先の拡大もあって会員数は増加傾向が続いている。また、「ASIA Cloud Panel」(日本を含むアジアの13ヶ国・地域)は、同社の品質管理基準※2を満たした海外の外部パネルも含めて約2,026万人の登録会員を有し、複数地域・国にまたがるパネルネットワークとしてはアジア最大級の規模を誇る。パネルについては定期的に品質基準審査を行っており、同社が設定した基準を満たさないパネルや提携先に関しては、随時見直しを行っている。

※1 infoQは同社が2002年より運用を開始しているインターネットリサーチ用パネルで、長期間アンケートに協力している会員が多数おり、会員のアンケートに対するロイヤリティの高さを維持している。
※2 パネル品質については、世界の調査業界のデファクトスタンダードに適用させながら同社独自の「品質管理基準」を作成し、同社のWebサイトで情報開示するとともに、それに沿った社内運用を実施している。具体的には、同社の特徴であるCloud Panelは事前にユーザーの重複を排除する仕組みを導入しているほか、アンケート回答者の回答データをチェックし、同社が定める基準によって不適切な回答者の排除など、品質管理に関する取組みを積極的に行っている。


3. 顧客(クライアント)の状況
調査会社、シンクタンク、コンサルティング会社などの調査のプロフェッショナルから受注するケースと、一般事業会社から受注するケースがある。提供するサービスのうち、アウトソーシングサービスとDIYサービスは主に調査会社を中心とする調査のプロフェッショナル向けのサービスで、その他サービスが主に一般事業会社向けのサービスとなっている。

なお、国内におけるコア・クライアントは、野村総合研究所<4307>を筆頭とする調査会社、シンクタンク、コンサルティング会社となっているが、中小規模の調査会社やインターネットリサーチ分野における他社からも受注するケースがある。また、最近では広告関連商材の取扱いも強化しており、広告・PR企業の顧客開拓も進めている。

海外におけるコア・クライアントも大手調査会社やそのグループ会社となる。また、欧米市場でも同社と同様のサービスを提供しているインターネットリサーチ会社があるが、これら企業も顧客となっている。これら企業はアジア市場でパネルネットワークを持っていないため、アジア市場のリサーチを行う際に同社へ発注することになる。逆に同社が国内のクライアントから欧米市場に関するリサーチ案件の依頼があれば、これら企業に発注するなど、協業関係にある。


インターネット上での調査のすべてを完結できるプラットフォームを構築していることが強みの源泉
4. 競合状況と同社の強み、課題について
インターネットリサーチ業界では、マクロミル<3978>やクロス・マーケティンググループ<3675>、インテージホールディングス<4326>、楽天インサイト(株)などが大手としてあるが、これら企業が調査企画・設計から調査・分析、コンサルティングまでフルサービスを展開しているのに対して、同社はプラットフォーム及びパネル調査(アンケート作成から収集まで)に特化したビジネスモデルを展開していることが大きな違いとなっている。同社はこれら企業からアンケート調査を受託しており、協業の関係にもある。純粋にパネル調査のみを展開している企業は未上場であるが規模は小さい。また、欧米にも同社と同様にパネル調査に特化した企業はあるが、アジア地域においてパネルネットワークを構築している企業は少なく、欧米では大手調査会社だけでなく、これら企業からアジア地域のパネル調査について受託するケースがある。

同社の強みは「GMO Market Observer」と「ASIA Cloud Panel」の業界共有プラットフォームをインターネット上でクラウドマッチングする調査体制を構築している点にある。調査会社、シンクタンク等の顧客企業に対してインターネット上で調査のすべてを完結できる(アンケートの作成から配信・回収・集計まで、従来複数のツールやシステムを使い分ける必要のあったインターネットリサーチの一連のプロセスを、同一のインターフェース上で実現する)プラットフォーム「GMO Market Observer」を提供し、同社が構築する仮想的な調査パネル「ASIA Cloud Panel」を活用できる体制となっているため、顧客が低コストかつ迅速にパネルを構築できることが強みとなっている。また前述したように、パネルネットワークは国内やアジア地域においてシステム連携により構築しているため、調査対象を拡大しやすいだけでなく、事業効率の点からも優れていると言える。

また、同社は「パネル供給改革」を経営戦略として掲げている。同社のリサーチパネルである「JAPAN Cloud Panel」及び「ASIA Cloud Panel」に、より多くの会員基盤を持つメディア企業が参加することで相互の事業価値を向上させ、さらにより多くの会員基盤を持つ企業が参加する呼び水となり、パネルが強化されるという好循環を目指している。

今後の課題としては、スマートフォンユーザーに対するアンケート手法の最適化が挙げられる。これまではPCによるアンケート回答を前提にアンケートフォームの作成が行われていたが、国内を含めてアジア市場でもPCよりもスマートフォンの普及率が高くなっており、パネル数の拡大やパネル回収力の強化を図るには、スマートフォンユーザーの取込みが不可欠と考えられるためだ。一般的にインターネットによるアンケート調査は10~100問と多数の質問事項が用意されているため、スマートフォンで回答するには煩雑さを感じるユーザーも多い。逆に、質問形式を簡素化すればクライアント企業が得られる情報が少なくなり、調査の意味をなさなくなるといったジレンマがある。今後は5Gの普及などモバイルネットワークの高速大容量化が進み、スマートフォンもフォルダブル型(折り畳みスマホ)が出始め、大画面化が進むことでいずれこうした課題は解消される可能性が高いものの、現状ではインターフェースの改善や回答率がアップするようなモチベーションの提供などを、試行錯誤しながら進めていくことになりそうだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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情報提供元: FISCO
記事名:「 GMOリサーチ Research Memo(4):システム連携によりアジア13ヶ国で2,000万人を超えるパネルを構築