■成長戦略

エルテス<3967>の当面の成長戦略は、既存の「ソーシャルリスクモニタリングサービス」の拡大に加えて、「内部脅威検知サービス」やその他の新規事業の立ち上げにより成長を加速するものである。また、利益面でも、人工知能等へのシステム投資や事業拡大に向けた人材確保など一定の先行費用が見込まれるものの、人工知能技術の活用による業務効率化や付加価値の向上、増収による固定費の吸収等により収益性をさらに高めていく方針である。

また、長期的な目線では、今後もIoTやブロックチェーン、仮想通貨、自動運転など、新しいテクノロジーが出るたびに、新たなデジタルリスクの発生が予想されるが、それらのデジタルリスクの対応する形で事業領域の拡張を目指す方向性である。さらには、あらゆるデータの形態を選ばずに収集し、すべてを集約した(分析の精度を高めた)上で、独自のリスク分析アルゴリズムをベースに各ソリューションを提供する「Eltes Data Intelligence構想」を掲げている。すなわち、同社はこれまでも、SNS上のオープンデータの収集・解析(風評ダメージや炎上対策)から始まり、組織内ログデータ(情報漏えい対策)、勤怠・入退室データ(生産性向上)など、より機密性の高いデータへと分析対象を広げることで、顧客企業に対するソリューションの幅(影響範囲)も広げてきたが、今後も、増加するデジタルデータを分析対象に加え、ソリューションの拡大を狙う戦略と言える。

加えて、デジタルリスクから派生する新たな社会課題(テロ対策、電子政府化、金融犯罪等)の解決にも貢献していく。また、個人認証技術の活用についても、前述のとおり、CYBERNETICA(エストニア)との連携により本格展開を開始したほか、ブロックチェーンの活用についても、プロジェクト化に向けた協議を開始したようだ。

弊社では、デジタル化の進展に伴う新たなリスク対策ニーズの拡大や東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた社会的リスクの高まりなど外部環境が一段と追い風となるなかで、他社に先行して優位性を構築してきた同社にとって、中長期的にも高い成長率を維持していくことは可能であるとみている。特に、順調に立ち上がってきた「内部脅威検知サービス」は、潜在的な市場が大きく、競合も少ないことから圧倒的なポジショニングを確立する可能性が高い。また、需要拡大が予想されている「イベント安全サービス」や「本人認証技術(エストニア関連)」についても、将来を見据えた先行投資により早い段階で事業を立ち上げ、提供実績を積み上げていく同社の戦略は理にかなったものと評価している。新規事業の進捗を含め、今後の具体的なソリューション実績や案件の広がりをフォローするとともに、他社との連携やM&Aなど外部リソースの活用にも注目したい。


■株主還元
成長のための投資フェーズであることから、しばらくは無配が継続する見通し
同社は、成長過程にあり、獲得した資金については、優先的にシステム等の設備投資や人材の採用及び育成投資などの事業投資に振り向ける方針としている。したがって、しばらくは無配が継続するものと弊社では予想している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 エルテス Research Memo(7):テクノロジーの発展に伴う様々なデジタルリスクに対応