a) 優良既存顧客への過度の依存 既述のように歴史のある同社のブランド力は高く、多くの優良顧客に認知されていた。これらの顧客の多くは固定客とも言えるリピータであり同社にとっては重要顧客であったが、一方でこれらの既存顧客への依存度が高かったため、新規顧客の獲得意識がややおろそかであり消極的であったと言える。そのため顧客層の世代交代が進むに連れて客離れが起きたと考えられる。
b) 顧客ニーズの変化への対応遅れ 一般の小売業と同様、メガネ市場においても顧客のニーズは変化していたが、これに十分に対応しきれていなかった。つまり、顧客が求める商品や価格、サービスが十分提供できていなかったのだ。結果として客離れ、売上高の減少を招いた。
c) 変革への躊躇 上記のような市場や顧客ニーズの変化を同社もかなり以前から察知はしていたが、実際には過去の成功事例が障害となり既存商品や店舗形態、販売方法などを変えることができなかった。頭ではわかっていても、なかなか変革に踏み切れなかったのである。
a) 音楽とファッション:エンターテイメント型店舗(2018年3月期末現在22店) コンセプトは「Music」であり、代表的な店舗である渋谷店(2012年6月改装)は若年層に訴求する格好の良さを追求、1950年代の仏パリにおけるアメリカを切り口に店装の色調も赤と黒をベースに、ヴィンテージギターやドラムセットを店内や外装にディスプレイするなど、一見メガネ店には見えない点が特徴。若年層のみならず既存のシニア層の顧客も引き留めることに成功し、業績は改装前は同社内店舗で下から1ケタ順位であったが、改装後は同社トップ店舗にまで一気に上り詰めた。同系統の店舗として、心斎橋本店、原宿店、博多マルイ店などがある。
b) パリのベルエポック型店舗(同64店) コンセプトは古き良き時代のパリ「Belle Epoque」。ベルエポックは、1800年代後半から1900年代前半の仏パリの古き良き時代、ムーラン・ルージュがにぎわい、バレエ・リュスがスキャンダルを起こしつつある時代をイメージした店舗。吉祥寺店(2014年8月)が改装第1号。その後も出店や改装が続き2018年3月期末には同様店舗が64店舗まで拡大した。
c) サロン(同24店) コンセプトは「コミュニティサロン」。地域の人々が毎日来たくなる店、安心してくつろげる空間づくりをテーマとして信頼・絆づくりを大切にし、年配の方やその家族が困った時に相談できる場所となるような店舗を目指しており、運転視力の測定や聴力測定などの機器の充実と、技術力向上に力を入れる。ハイレベル商品とサービスを発信する都市型ビルイン店舗と主に郊外お城型の安心できる店舗の2タイプがあったが、2018年3月期からは新しいコンセプト「居心地の良い空間」を取り入れたロッジ風店舗をオープンしている。ただし現在では、売上高が停滞する店も出始めているため、今後はこのサロンの統廃合も重要な店舗政策になってくる。
(1) 日本市場:メガネ a) 団塊ファミリーに注目 団塊の世代は白内障予備軍、団塊ジュニアは老眼予備軍、団塊グランドジュニアは近視予備軍なので、これらファミリー層に対して複数個の提案やファッション商品の提案を行う b) 脱レギュラーチェーン 地域の顧客に合わせたサービス、店づくりを進める c) 店舗をエンターテイメント、複合サービスの大型店に集約する d) 真のMade in Japanを求めやすい価格で提供する e) ネットとリアルの融合による新しいサービスを提供する f) メディカルとの連携、アイケアを強化する g) エリアの「営業責任者」を「経営者」(GM)として育てる
(2) 日本市場:新規 a) メガネ、補聴器以外の事業を関係会社に集約する b) 「物販」からほかが真似できない「サービス」事業へ展開する c) 収益構造が確立してから持株会社(三城ホールディングス)へ移管する
(3) 海外:メガネ a) 市場の優先順位を明確にする b) 不採算事業の撤退を含めた抜本的な見直しを行う c) エンターテイメントの活用 d) パリミキサービスのブランド化を進める
(4) 海外:新規 a) 医療ビジネスとの協業を進める b) アセットマネジメント事業の可能性を探る