■業績の動向

1. 2018年8月期第2四半期決算の概要
日本BS放送<9414>の2018年8月期第2四半期決算は、売上高5,955百万円、営業利益1,577百万円、経常利益1,578百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益1,069百万円と増収増益で着地した。

なお同社は2018年1月11日付で児童書出版の老舗2社を子会社化し、今第2四半期決算より連結決算に移行した。今第2四半期決算では貸借対照表のみ連結し損益計算書は連結していないが、子会社化に伴う費用の計上等により連結決算の利益額は個別決算の利益額とは異なっている。

売上高は5,955百万円と計画の6,100百万円に対してわずかに届かなかったが、ほぼ計画線で着地した。その詳細は後述するが、同社が注力してきた良質な自社制作番組の提供と広告枠の付加価値向上への取り組みが着実に広告収入増に結びついた結果と言えるだろう。

同社は今第2四半期から連結決算に移行したが損益計算書の連結は行われていないため、売上高については実質的には単独(個別)決算と同じとなっている。その前年同期比の伸び率は10.1%増と2ケタの増収率を確保した。同社が属するBS放送市場の市場規模は、2017年において前年比2.9%増と、3年連続で1ケタ台前半の伸び率にとどまった。その間、同社の売上高の伸びは2ケタ台を維持し、市場全体を大きくアウトパフォームしている。ここに、同社の経営戦略が正しかったということと番組作りの実力が着実に高まっていることが如実に表れていると弊社では考えている。

一方利益面では、各利益項目とも計画を40%以上上回った。同社は2018年8月期においては、良質の番組作りのために費用を積極的に投下し、売上高の高成長持続を優先する一方、利益については一時的な成長鈍化を甘受する方針を打ち出した。そうしたなかでの利益の上振れを投資家としてどう評価すべきか、一瞬判断に迷う向きもあるだろう。

この点について弊社では、今第2四半期の利益上振れは素直にポジティブに評価して良いと考えている。詳細は後述するが、良質の番組作りへの取り組み並びに、それに伴う費用の投下は着実に実施されている。この点がまず重要なポイントである。そうしたなかで同社が費用の効率的な使用に徹した結果、利益の上振れにつながったと弊社では分析している。


今第2四半期は好評の既存番組を主体に臨み2ケタの増収を達成
2. 売上高の動向
出版会社を子会社化したことで同社の事業は大きくBSデジタル放送事業と出版事業に分けられるが、その実質的なスタートは今下期からとなる。今第2四半期までは従来同様、BSデジタル放送事業の単独セグメントという構成だ。そのBSデジタル放送事業は収入タイプ別に、タイム収入、スポット収入、その他の3つから成っている。

2018年8月期第2四半期は、タイム収入が4,344百万円(前年同期比8.4%増)、スポット収入が1,451百万円(同12.4%増)、その他が159百万円(同49.0%増)と、いずれも堅調に伸長した。

タイム収入は広告主に番組の放送時間枠を販売する形式の収入だ。同社が取り組む“良質な番組の制作”の効果はタイム収入に反映されることになる。今第2四半期は従前から好評を得ている『あなたが出会った 昭和の名曲』を1時間から2時間へと拡大して放送したほか、同じく人気番組の『尾上松也の謎解き歴史ミステリー』やアニメソングをオリジナルアレンジで提供する『Anison Days』を継続して放送し、タイム収入の増大へつなげた。また、通信販売枠を強化し、通販枠販売が伸びたこともタイム収入増に寄与した。

スポット収入は番組間の時間枠を広告主に秒単位で販売する形式の収入だ。今第2四半期はBS放送の媒体価値向上に伴って純広告スポット販売が好調に推移したほか、人気ドラマを効果的に編成することで通販スポット販売も堅調に伸長した。

その他は地上波ローカル局への番組販売や制作委員会方式によるアニメ作品等にかかる出資配当金などがその内容となっている。今第2四半期は配当金収入、番組販売がいずれも伸長し、前年同期比で大きく伸長したほか、期初計画に対しても上回って着地した。


番組制作費をしっかり増額する一方、広告宣伝費を抑制し、利益上振れを実現
3. 費用・利益の動向
前述のように、今第2四半期決算の利益は計画を大きく上回って着地したが、その裏側ではかけるべきところにはかけ、削れるものは削るという、メリハリの利いた費用の投下が行われている。ここが今第2四半期決算の最も重要なポイントだと弊社では考えている。

積極的な費用の投下は、番組関連費用の増加として現われている。今第2四半期の番組関連費用は1,783百万円で前年同期比15.1%増となった。その内訳は番組購入費が279百万円(前年同期比0.1%減)、番組制作費1,504 百万円(同18.4%増)となっており、良質な番組作りのために費用が投下されたことがわかる。

一方、広告関連費用は337百万円で前年同期比24.6%の減少となった。同社は認知度向上、ひいては売上高の拡大のために、広告宣伝費用に関しても積極的に投下する方針だ。しかしそれは野放図にばらまくことではない。これまで同様、費用対効果を見極めつつ効率的な広告宣伝費の投下を徹底した。また、同社は2017年10月の番組改編に当たり、新番組の投入よりも既存の人気番組の継続及び強化を主体に臨んだため、新番組を積極的に投入するケースに比べて相対的に広告宣伝費を抑制できた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 BS11 Research Memo(3):メリハリのある費用の投下で、2ケタの増収増益を実現