■中長期の成長戦略

3. 上水事業:高収益のストック型ビジネス

エスコサービスの契約期間は10年の長期になる。既存の顧客との契約が長期間にわたり継続して安定的な収益を生み、新規契約が収益を加算するストック(積上げ)型のビジネスモデルになる。各現場とも、供給開始初年度から黒字化する。

供給設備の減価償却法は定額法を用いている。契約期間内の年間償却負担は一定だが、2年目より営業費用が不要になるため、営業利益率が大幅に改善する。さらに償却期間が終了した10年目以降も契約が継続されれば、収益性は飛躍的に上がることになる。エスコ事業は2006年12月期から開始されており、償却済みの高収益物件が増えることになろう。

最近の展開としては、バイオろ過技術の導入が挙げられる。これは鉄・マンガン・アンモニアを多く含む原水でも薬品注入を行わず、それらを除去できるようにしたことで、従来、飲料化が敬遠されていた地下水でもコストを抑え高度に処理することができる。透析を行う医療機関では純度が高く大量の水を必要とするため、日々の使用以外にも緊急用としての需要拡大が見込まれる。また、採用困難だった地域・施設などでの需要も期待される。

現在開発中の設備のユニット化は、上水事業の拡大を加速する原動力となりそうだ。ダイキアクシス<4245>は他社に先駆けて、ユニット化に取り組んでいる。コストダウンと工期短縮により、エスコビジネスの新規獲得の上限を引き上げる、顧客層を広げる、施工期間の短縮による施工能力拡大などのメリットが見込まれる。ユニット化は現場作業を工場内製造が代替することで施工性を高める。パッケージ化された設備は1件当たりの設備投資額が低下するため、同社のエスコビジネスの新規獲得の上限を現在の年15件から引き上げることができる。また、コスト面から従来の装置であれば病院の場合100床以上の規模が必要とされているものが、より小規模の病院でも導入メリットを享受できるようになる。老健施設やインバウンドの拡大により増加しているホテル建設等に対応した低コスト供給が可能になる。設置工事期間が短縮化でき、従来の人員数でより多くの設備の建設が可能になる。

地方自治体による水道経営の持続性確保が危ぶまれている。水道設備の老朽化により更新が必要となるものの、少子高齢化による利用者数や1人当たりの使用量の減少が予想される。2015年2月に新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構事務局が公表した「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?全国推計並びに報告書」によると、2040年時点において各事業体が赤字経営とならないために水道料金の値上げが必要とされる事業体数は1,221に上り、分析対象全体の98%に及んだ。このうち、604事業体においては30%以上の料金改定が必要と推計している。飲水人口20万人未満の給水人口の少ない自治体ほど、料金改定率が高くなる傾向にある。地域別では北海道及び東北地方が多い。

自治体による水道料金の改定は同社の上水事業の需要を拡大する。水道料金の値上げは下水料金の引き上げを伴うため、使用した上水を再利用して排出量を抑制する中水事業のニーズも高める。PFIなどの形を取る行政の民間委託は、上水事業だけでなく排水処理のコミュニティプラントでも期待される。同社が上水・中水・下水のフルラインアップを持つ強みが生かされる事業環境となることが予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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情報提供元: FISCO
記事名:「 ダイキアクシス Research Memo(10):国内はストック型ビジネスの上水事業を強化