みなさんこんにちは!フィスコ マーケットレポーターの高井ひろえです。前回に引き続き、『リスク管理』について一緒に考えてみたいと思います。

前回は、商品先物取引で成功する秘訣としてリスク管理の重要性を説明しました。リスク管理の視点から見ると、例えば300万円の資金を運用する場合、金先物や米ドル/円(くりっく365)なら何枚を売買するのが合理的と言えるでしょうか。

これを考える前提として、金と米ドルをそれぞれ1枚売買するのに最低必要な証拠金の額は、金(標準)が66,000円、米ドルは44,960円であることを確認しておきます(7月30日現在の最低証拠金)。これらを仮に最低単位である1枚ずつ、現物で買うとすると、金(1000グラム)=435万円、米ドル(1万ドル)=110万円になります。

■金と米ドルへの資金配分はどうする?

300万円の資金なら、単純に考えれば、金なら45枚(300万円÷6.6万円)、米ドルなら66枚(300万円÷4.5万円)取引できることになります。ですが、手持ちの資金を全て1回の取引に投じることは、リスク管理の観点からみると適切な考えとはいえません。相場が自分の考えと逆の方向に動いたら、次の取引に支障をきたすほどのダメージを受けてしまうからです。

それでは、300万円の資金がある場合、1回の取引でリスクにさらす“適正な投資額”はいくらになるのでしょうか。例えば300万円を10個の小口資金に分けて、1回あたり30万円を“適正な投資額”とした場合は、どうでしょうか?これもあまり良い選択とはいえそうにありません。なぜなら、投資対象は、金でも米ドルでも、1日に変動する幅がすべて異なるからです。このことはつまり、金と米ドルに同じ金額を振り分けることの不合理を示しています。

そこで変動幅が大きい銘柄、つまりリスクが大きい銘柄への投資額は少なくし、変動幅が小さい銘柄、つまりリスクが小さい銘柄への投資額は増やすという、リスクに応じた投資額の調整を考えます。

■「ATR」という考え方
それでは、変動幅の大小はどのように判断したらよいでしょうか。この問題に対する回答は簡単ではありません。その理由は、相場は大きく動く日もあればほとんど動かない日もあるからです。ある日の値動きだけを見て、単純に金の値動きは大きい、米ドルの値動きは小さいとはいえないはずです。

この点を解決したのが、「ATR」(AVERAGE TRUE RANGE)という考え方です。“TRUE RANGE”は“最大の値幅”、その平均値がATRです。簡単にいえば、“1日に動く値幅の目安”ということになります。本来なら、ここで計算の方法をご紹介したいところですが、紙幅の関係で、こちらは様々なネットサイトに譲ります。簡単に言うと、1日の最大値幅を過去に遡って算出した移動平均値と考えていただければと思います。

ATRは複数の商品先物会社や証券会社がホームページなどで公表しています。そのうちのひとつによると、7月27日(金)時点の金先物のATRは33.4円、米ドル/円は0.7円。つまり、平均的に金は1日当たり33.4円、米ドルは0.7円動くという意味になります。

ATRは日々変化しています。2018年7月に33.4円の金のATRは、かつて80円だった時もあります。ATRが大きいほど価格変動幅が大きい銘柄ということになりますが、リスク管理の観点からいえば、投資額が一定である場合、ATRの大きい銘柄のポジションは少な目に、ATRの小さい銘柄のポジションは大目にとることにより、投資リスクを調整することになります。次回のコラムでは、ATRを活用して、銘柄ごとに、具体的にどれくらいのポジションをとればよいのかを計算で求めてみましょう。

フィスコ マーケットレポーター 高井ひろえ






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情報提供元: FISCO
記事名:「 すぐ始めたい人のための「先物取引入門」(10)銘柄ごとのリスクの調べ方(高井ひろえ)