英政府は4月4日、ステーブルコインを国内で利用できるようにするための法制化など、自国を暗号資産(仮想通貨)技術と投資の世界的なハブとして位置づけていく方針を発表した。米国では2021年4月、コインベース(Coinbase)がナスダックに上場を果たし、ビットコインを中心とした暗号資産による先物・オプション、同先物によるETFなど金融商品化でも同国マーケットは先を行く。

対する日本の動きは鈍いと言わざるを得ない。東京証券取引所が暗号資産交換業の新規株式公開(IPO)を受け付けていないなどという話は、その代表例である。国内暗号資産交換業大手コインチェックは国内を素通りし、2022年内をめどに特別買収目的会社(SPAC)との統合を通じてナスダック市場へ上場する予定である。また、4月2日には国内の暗号資産交換業大手ビットフライヤーが投資ファンドに買収されるとの報道があったものの、株式全体の評価額は最大450億円であるという。コインベースの時価総額約5.5兆円と比較した規模感の違いは歴然だろう。日本国内には、暗号資産業界が育成される土壌が極めて乏しい。

このままでは、日本から暗号資産が継続的に失われる状況が容易に想定できる。季節要因の部分もあるとはいえ、2022年1月に日本の経常収支が過去最大に迫る1.1兆円の赤字であったことは記憶に新しいだろう。日本は既に貿易収支が損益線もしくは赤字傾向であり、「成熟した債権国」である。EVの普及による国内自動車産業の弱体化、それによる更なる貿易収支の悪化が観測されれば、「成熟した債権国」から「債権取り崩し国」に転落する可能性もある。その際、赤字収支を埋める必要があり、海外からの資金流入を図る政策を推し進めることが肝要になる。

分散をキーワードにブロックチェーン技術が多用されるWeb3.0の世界においては、暗号資産の活用も多分野に及ぼう。web3.0は非中央集権的・分散的なインターネットと解釈されている。web1.0の頃は通信環境も悪く、サイト開設者が一方的に情報を開示する状況であるのに対して、web2.0は通信環境の向上、それに伴うリアルタイムおよび双方向性に特徴があり、GAFAMやプラットフォーム企業が大きく成長している。ただ、GAFAMやプラットフォーム企業が中央集権的に情報を持ちすぎているという欠点も浮上しており、非中央集権的・分散的にデータを管理していこうという方向性が台頭している。ビットコインやイーサリアムに代表とされる暗号資産も非中央集権的・分散的であり(非中央集権的・分散的な環境を実現するために使い勝手が良く)、web3.0との相性が非常に良い。暗号資産の取り込みに失敗するということは、とりもなおさずweb3.0でも遅れを取ることになろう。暗号資産による直接的な海外からの資金流入が果たせないことはもちろん、web3.0の世界における収益機会のロスということで、日本は先に述べた海外からの資金流入の重要な1つのルートを失うことになる。今の日本に必要なものは、「新たな資本吸収戦略」であろう。

<TY>
情報提供元: FISCO
記事名:「 Web3.0でも亡国、日米暗号資産の業界規模感は100倍超の差