緊急事態宣言下ではありますが、外せない用事で週末に横浜に行きました。夕方通りがかった中華街は、店の従業員が路上で話していたり、視察のような人々が往来している程度。人気の豚まんのお店にもシャッターが下りるなど、聞いていた以上の厳しい状況を目の当たりにしました。

政府や日銀の支援で、2020年の全国倒産件数は、前年比7%減と1990年以来の低水準で着地しました。一方、水面下では、倒産に追い込まれる前に事業をやめる「自主廃業」を考える企業が増加しています。 東京商工リサーチが先週発表したアンケート調査によれば、廃業を検討している飲食店は全体の38%と、9月調査から8ポイント、前月からも5ポイント悪化しました。しかも、これはインターネット調査ですから、日常的にネットで業務をしていない零細店を入れたら、状況はもっと深刻かもしれません。

世界でみても、債務返済が難しいゾンビ企業は、数も債務額も一段と増加している模様です。米国ゾンビ向け債務額は前年比倍増の200兆円に達した模様です。

頑張りたいと思っている企業でも、債務の増加は成長投資をためらわせ、経済の勢いを削ぎます。BISは、債務過多の企業の割合が1%増加するごとに生産性が0.3ポイント悪化すると試算しています。

新型コロナがあと数か月で収束すれば、多くの企業の業績は急回復し、市場が織り込んでいる通りのシナリオが実現するでしょう。しかし、膨張した債務は残ります。一部の業界では、ライフスタイル自体の変化で、売上も成長力も元には戻らないかもしれません。業界分散や資産の分散で、まだら模様の景気低迷へのヘッジはしておきたいと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:1/25配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)


<FA>
情報提供元: FISCO
記事名:「 コラム【アナリスト夜話】中華街のゴーストタウン(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)