[日経平均株価・TOPIX(表)]

日経平均;25143.52;-77.89TOPIX;1784.66;-9.37


[後場の投資戦略]

 本日の日経平均はおよそ1年4カ月ぶりに25000円を割り込んでスタートするも、その後グロース株を中心に押し目買いが入って下げ渋る展開となっている。ドイツのショルツ首相が欧州のロシアからのエネルギー輸入について「現時点ではほかの方法で確保することができない」と述べるなど、早期の禁輸実施に慎重な姿勢を示し、原油先物相場が反落していることが安心感につながったとみられる。為替市場で動向が注目されるユーロも足元下げ渋り。株式市場ではグロース株が堅調な一方、市況関連株に利益確定売りが出ている。前引けの日経平均が-0.31%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-0.52%。ここまでの東証1部売買代金は1兆9000億円あまりと引き続き多い。

 新興市場ではマザーズ指数が+1.34%と5日ぶりに反発。グロース株高の流れを追い風に、前日割り込んだ700pt水準を維持しようとする動きを見せている。再生細胞薬の国内承認申請を発表したサンバイオ<4592>は朝高後に利益確定売り優勢。メルカリ<4385>は変わらずだが、FRONTEO<2158>やJTOWER<4485>が買い優勢。業績上方修正のアスカネット<2438>は急伸している。

 さて、欧州首脳らが禁輸への慎重姿勢を示し、エネルギーの供給不安がやや和らいだ格好だろうが、ロシアはなおウクライナ侵攻の手を緩めておらず、追加制裁への不安は残るだろう。米超党派議員によるロシア産原油の禁輸などを盛り込んだ法案は、早ければ9日にも下院で採決されるという。デリバティブ(金融派生商品)市場では、月内の1バレル=200ドル突破を視野に入れたオプション取引も行われているようだ。

 英バークレイズや米JPモルガン・チェースといった金融大手は世界成長見通しを引き下げるとともに、インフレ予想を引き上げ。また、米モルガン・スタンレーやシティグループは株式相場の大きな波乱を予想しているという。商品価格の先高観とスタグフレーション(景気悪化と物価高の併存)への懸念は拭いづらそうだ。

 また、インフレの高進に対し「米金融引き締めは不可避」「0.25ptペースの利上げでは不十分」といった市場関係者の声が多く出てきている。金利上昇による米財政への影響を不安視する向きもあるようだ。米連邦準備理事会(FRB)は10日発表の2月消費者物価指数(CPI)を確認したうえで15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)に臨むが、度々指摘しているとおり金融政策の舵取りは難しさを増している。エネルギーの供給不安がくすぶる欧州でも10日に欧州中央銀行(ECB)理事会が開かれ、注目されるだろう。

 こうした局面でも、各国株式市場では個人投資家の押し目買い意欲が根強いようだ。米国でも足元、ハイテク株投資で知られるキャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントの上場投資信託(ETF)に資金流入が見られるという。
日本でも個人投資家に人気の高いマザーズ銘柄は信用買い残の整理がさほど進んでおらず(あるいは増えており)、根強い買いが入っていることが窺える。

 「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は7日、36.45(+4.47)に上昇した。ただ、1月下旬に一時40近くまで上昇したのち反落した経緯があり、この水準でも
「総悲観」というにはまだ遠いだろう。先行き不透明ななかでの「強気の押し目買い姿勢」は、今後の更なる波乱を暗示しているかもしれない。
(小林大純)
<AK>
情報提供元: FISCO
記事名:「 「総悲観なお遠い」のがリスク?