株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)では、2021年のセルロースナノファイバー(CNF)世界市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかに致しました。

1.市場概要
2020年のセルロースナノファイバー(Cellulose Nano Fiber、以下CNF)世界生産量はサンプル供給を含め57tにとどまり、2021年も57~60t、出荷金額は53億7,500万円と横ばいから微増の見込みである。現在、CNFは機能性添加剤や樹脂強化材としての採用が中心であり、最終製品における使用量そのものが大きくないことに加え、マーケットで広く展開されているメジャー製品への採用が無く、CNFを使用した製品の販売量が限られている。
用途別の採用状況をみると、機能性添加剤用途は透明性や増粘効果、分散安定性、乳化安定性の高さやチキソ性など、他の材料には無いCNFならではの特性がユーザー企業(需要家)から評価されており、ユーザーが「CNFを選ぶ理由」も明確である。少量添加で高い効果が得られるため、既存製品との価格差はさほど問題にはならないケースも多く、採用例も着実に増えて来ている。
但し、機能性添加剤用途では使用量が少量であるため、CNFでまとまったボリュームの需要を確保するためには重量あたりのCNF配合率が10~20%と使用量の多い複合樹脂での採用が望まれる。ただ、樹脂複合化用途では材料の価格が製品のコストに直結する。現状ではCNFはガラス繊維や無機フィラーなどと比べて価格が高く、これが採用が広がらない要因の一つとなっている。

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2.注目トピック~CNFと競合材料との価格差を凌駕する「採用の必然性」の訴求力が問われる
最近、未処理パルプを数十~数百μm程度のサイズに解繊したセルロース繊維が市場投入され、脱プラスチックをアピールしながらGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)やPPなど既存の樹脂代替を推し進めている。セルロース繊維強化樹脂の価格はCNF強化樹脂の20~25%程度と推計され、GFRPよりも高価であるがCNF複合樹脂ほどには価格差が開いていない。
加えて、植物由来パルプを多く使用することによるCO2削減効果や、GFRPでは難しい水平リサイクルが可能である点を強みとしてアピールしている他、強度や耐衝撃性などはCNF強化樹脂には及ばないものの、単体の樹脂に比べて引張強度や曲げ強度、曲げ弾性率、荷重たわみ温度などの物性は向上するため、樹脂強化目的であればセルロース繊維で十分であるとの見方もある。
CNFはこれまで、日本発の新しい高機能材料としてワールドワイドでの需要拡大が期待されてきたが、このままでは市場が本格的に確立する前に「高性能だが高価でニッチなガラパゴス」な材料になる懸念も否定できない状況となってきた。これを回避するためには、ユーザーに対して、競合材料ではなくCNFを採用する必然性を示す必要があると考える。

3.将来展望
CNFを提案するメーカー、採用を検討するユーザー企業はともに、用途開発を進める中で透明性、高剛性、チキソ性をメリットとして活用し、水に弱い、水系以外の材料に分散せず凝集するといった特性はデメリットと位置づけ、これを解消する方向での開発を進めてきた。確かに、長所を活かし短所を無くす方向での開発により採用に至った例も多いが、一方で、CNFメーカー、ユーザー企業双方にとって「想定の範囲」での用途開発にとどまっていると見ることもできるだろう。
CNFのような新しい材料を事業化する上では、既存の競合材料にはない新たな性能や付加価値の提案に加え、従来の枠組みにとらわれず、ユーザーの想定をこえた「驚き」をもたらす提案をいかに進めているかが問われると考える。CNFという材料をゼロベースで見直し、市場やユーザーの期待以上の提案こそが、新たな市場を創出し、需要の拡大につながるのである。

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調査要綱
1.調査期間: 2021年2月~4月
2.調査対象: セルロースナノファイバーメーカー(製紙メーカー、化学メーカー等)、ユーザー、研究機関
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(Web取材を含む)をベースに、文献調査併用
4.発刊日:2021年4月30日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】セルロースナノファイバー世界市場に関する調査を実施(2021年)~2021年のCNF世界生産量は57~60t程度、出荷金額は53億7,500万円の見込~