業務改善と規格開発を推進する英国規格協会(The British Standards Institution、以下「BSI」)が実施した調査において、中国とインドは、医療、食品安全、持続可能性などの分野で、人工知能(AI)の潜在能力を引き出そうと取り組んでいることが分かりました。その一方で、日本、英国、フランス、ドイツなどの主要国は、AI技術に対する国民の信頼の低さに起因する大きな信頼性格差に直面しており、AI活用という好機を逃すおそれがあることが明らかになりました。
BSIが世界9か国の成人10,000人を対象に実施した「AIに対する信頼度調査(Trust in AI)」で、AIが社会をより良くする可能性に関する意識が明らかになりました。半数以上(52%)がAIにより医療診断の精度を向上させることで、誰にとってもより良い未来を形作ることができると期待を膨らませ、半数近く(49%)が食品廃棄物の削減に役立つと歓迎しています。さらに、52%はAIがよりエネルギー効率の高い建築環境の構築に役立つと回答しています。 人々はAIがもたらすメリットについては認識しているものの、AIに対する信頼度は世界的にまだ低いままです。たとえば、食品の汚染を検出する際に人間よりもAIを信頼していると答えたのは世界全体のわずか4分の1であり、AIツールが診断や治療に利用されていることを患者に知らせるべきであると答えたのは69%、騙されやすい消費者にはAI関連の保護が必要だと感じている回答者は57%でした。また、57%が銀行取引に顔認識を使用するなど、すでに多くの人々がAI技術を使用していますが、ここにAIが使用されていることを認識している人はわずか半数にとどまっています。人々がAIへの理解を深め、その能力全体を享受できるようにするためには、教育が重要であると考えられます。 BSIによるこの調査は、どうすればAIのイノベーションが進歩を加速させる要因になるかについての論考を集めた「Shaping Society 5.0」(※1)ページのために実施されました。本調査では、AI技術に対する信頼性を高めることの重要性が強調されました。AIは2030年までにどこにでも使われるようになると多くの人々が予想しています。たとえば、家庭の自動照明(41%)、自動運転車(45%)、旅行時の生体認証(40%)などです。また、回答者の4分の1以上の26%が7年以内にAIが学校で日常的に使われるようになると予想しています。