岩手県出身のベルトラスタッフの私が、苦しく胸が締め付けられる日。3月11日。

震災発生当時、岩手に住む両親と5日間連絡がつかず、やっと電話がつながった日には安堵から声をあげて泣いたことを鮮明に覚えています。

東京で生活をしているとどうしても記憶が風化してしまいがちですが、被災地はいまだ復興過程であり、深い心の傷と不安を抱えたままの方が数え切れないほどいらっしゃるのが現実です。

2022年4月に、ベルトラは環境省と「国立公園オフィシャルパートナーシップ」を締結したと発表しました。取り組みのひとつとして、自然との共存・平和を啓蒙する「ピースツーリズム」の推進が挙げられています。

国立公園との連携を通じて震災復興を支援していきたいという取り組みなのですが、どうしてその決断をしたのか?そしてあまり聞き馴染みのない言葉、ピースツーリズムとは何なのか?

スタッフの率直な疑問を、ベルトラの二木社長にぶつけ、お話を聞きました。

ピースツーリズムに取り組むに至った経緯

日本の国立公園のアクティビティを強化する一貫で、2021年11月、友人に三陸復興国立公園の玄関口である宮城県石巻市を紹介いただいたのがきっかけでした。

三陸復興国立公園とは、東日本大震災により被災した三陸地域の復興に貢献するために、平成25年に創設された比較的新しい国立公園のことです。 三陸エリアは入り組んだ地形と壮大な断崖絶壁のリアス式海岸が続く景観で知られています。新鮮な海の幸も味わうことができ、さらには防災教育を目的とした人々や教育旅行などでも全国から訪れています。

石巻市は東日本大震災でも特に被害が大きかった町です。私は当時の震災ボランティアには駆けつけておらず、初の訪問でした。一方その友人は震災直後から石巻市を何度も訪問しており、どのように復興し現在に至るのかを、丁寧に町を案内しながら話してくれました。

その際に石巻市長を始め、地元名士の方や観光事業者など沢山紹介いただき、石巻市、女川町・南三陸町などの震災遺構の視察や、一般公開に先駆けて大川小学校を視察する機会もいただきました。

今現在も復興の最中であり、私自身が10年の歳月で記憶がすでに薄れかけていたこと、そして自身が無関心になりかけていたことを猛省しました。

この経験は同時に、日本各地そして世界中のどこかで今も災害が起こり、被災した地域では今も復興にむけて取り組んでいること。被災した地域から離れれば離れるほど、長く心に留めていく事がむずかしくなり、現地に足を運び、旅を通じて直接向き合うことの重要性を再認識する機会となりました。

ベルトラで何ができるのか。その一つの方法として、 楽しい思い出につながる旅の体験だけを提供していくのではなく、訪問先の史実と向き合い、平穏な日々や平和の尊さ、自然の素晴らしさを実感して明日(未来)への行動に繋ぐこと。 それがベルトラが社会で果たすべき役割であり、それらの体験全てが「心ゆさぶる体験」であると強く感じました。

復興支援のためにツーリズムができること

ピースツーリズムとは、災害跡地や戦争跡地、平和関連施設を巡り自然との共存・平和の大切さや重要性を理解・促進する観光を通じた歴史体験のことをいい、広島が発祥です。

その土地を訪れる旅行者の目線で震災という史実と向き合える機会を提供することが重要なのではないかと考える中で、石巻市を拠点に防災・地域づくり事業をおこなう公益社団法人3.11メモリアルネットワークの中川さんを紹介いただき、「語り部」の存在を知りました。

https://www.veltra.com/jp/japan/miyagi/a/167547?sid=1554

https://www.veltra.com/jp/japan/iwate/a/116966?sid=1554

https://www.veltra.com/jp/japan/iwate/a/176324?sid=1554

現在、復興予算が大幅に縮小されるなか、被災地にとっては今後観光から大きな収入源を得られる可能性があります。石巻市をはじめとして、多くの自治体が自立のために民間との連携を推進しており、我々ベルトラも微力ながら、その土地を訪れる目的や機会を提供することで、復興支援のお手伝いができればと考えています。

歴史や平和について、無関心にならないために

新型コロナも次第に落ち着きつつあるものの、未だ世界中で天災や戦争などのニュースが絶えません。遠く離れた場所でも、その土地を訪れたことがある人なら、無関心でいられないはずです。

私自身も実際に東北を訪れることで、復興がいかに難しいことか、身をもって体感し、行動を起こさずにはいられませんでした。

これまでベルトラをご利用いただいてきたお客様は、文化の違いや多様性を楽しむことができる、知的好奇心の高い方が多いと認識しています。特にこの数年で、 まだまだ日本には未開拓の魅力的な場所が数えきれないほどあると実感しました。

東北の観光地としては松島、仙台などが人気ですが、ぜひ三陸復興国立公園に足を伸ばしていただければと思います。

旅先には必ずそこに暮らす人々の歴史があります。それは良いことだけでなく、悲しく辛い事実も含めた歴史です。そういった歴史と現実に触れ、様々な考えを持った人々に旅先で出逢い、違いを認識することで、日常の平和の有難さや、世界の奥深さに気付けるのが旅行の良さではないでしょうか。

これらの活動はご覧いただく方によっては、当事者の思いや苦慮に対する配慮が至らぬ点などのご指摘もあると思います。しかし私たちは決してこの活動を止めず前進させてまいります。

ベルトラは旅に関わるひとりひとりに寄り添い、地域に寄り添い、より良い世界の実現に貢献するため、出来ることから始めていきたいと考えています。

おわりに

二木社長へのインタビューを通じて、改めてピースツーリズムに取り組む意義と、現実を未来へと繋ぐ「震災語り部」の方々の役割の大切さを感じました。

岩手出身の私だけでなく、被災地である宮城県気仙沼に家族がいるスタッフも在籍していたベルトラでは、震災当時に支援金だけでなくその後の就労支援として、仙台や気仙沼など被災地域のハローワークに足を運び、求人活動をしたこともありました。

しかし、旅行事業という側面からは、長く海外オプショナルツアーが主力商材だったことから、東北と関わる機会を持てずに今日まで来たのが事実です。

しかし現在、微力であり牛歩の歩みではありますが、旅という角度から復興支援の取り組みを開始しています。

決して癒えることのない傷。それを無視せず風化させず、そしてこの平穏な毎日に感謝しながら前を向き続けることで、東北の魅力発信とピースツーリズムへ取り組んでいきたいと思います。

参考


VELTRA

余暇プランナー

「心揺さぶる」旅の体験を届けるというミッションのもと、日本国内・海外のツアーやアクティビティの催行会社と共に日々活動を行っています。日本国内や世界各地の旅に関する便利な情報やアイディア、現地からお届けするホットな話題、さらに おうちで体験できるオンラインツアーの情報などをまとめ、発信していきます。次の旅行のヒントとなる情報を探してみてください。

【3月11日に知る】震災語り部の存在とピースツーリズム

情報提供元: YOKKA
記事名:「 【3月11日に知る】震災語り部の存在とピースツーリズム