日本人は金融資産の大半を貯金にまわし、投資にはあまり積極的でないと言われてきました。その理由はいったいどこにあるのでしょうか。エフピーウーマンのファイナンシャルプランナー、石倉博子さんが解説します。


日本の高い「現金・預金」比率

家計における金融資産構成を米国、ユーロエリアと比べた表があります。


出典: 「資金循環の日米欧比較」日本銀行調査統計局(2018年8月14日)

これを見ると、現金・預金の比率が、米国13.1%、ユーロ33.0%であるのに比べ、日本は52.5%と圧倒的に高く、金融資産の半分以上を現金・預金で持っていることがわかります。

一方で株式等の運用資産(株式等、投資信託、債務証券)の割合は、米国が53.9%、ユーロが31.3%に対し、日本は16.2%どまりです。日本人が資産運用に消極的であることがわかります。

なぜ投資をしないのか

日本人が投資に消極的な理由について、野村総合研究所の調査結果を元に探ってみましょう。

日本の投資経験者はどのくらい?

下の図は日本人の投資経験者と投資未経験者(さらに投資関心層と投資無関心層に分けています)を表したものです。


出典: 「個人の投資に対する取り組み状況に関する調査」野村総合研究所(2015)

これを見ると、若い人ほど投資経験は少なく、年齢が上がるに連れて投資経験者が多くなりますが、一方で投資に関心がある人の割合は若い人の方が高くなっています。ここで注目すべき点は、投資経験者の少なさと無関心層の割合の多さです。20~40代全体で見ても、投資経験者は27%しかおらず、半数以上が投資に無関心という結果となっています。

投資をしない理由は?

前述の投資無関心層に、投資をしない理由を聞いています。その結果が下のグラフです。


出典: 「個人の投資に対する取り組み状況に関する調査」野村総合研究所(2015)

最も多い理由が「損をすることが不安である」ことから、“投資”にマイナスイメージがあることが伺えます。「投資はリスクがあるもの」という前提に、二の足を踏む人が多いようです。

次に「難しそう・敷居が高い」「十分な知識がない」と続きます。これは、日本では、金融リテラシーを学ぶ機会があまりないことが原因のように思われます。学校教育ではもちろんのこと、社会に出てからも学ぶ機会は限られており、自ら知識を得ようとしない限り得られない日本の現状を反映しているように思います。

このままでは日本はどうなる?



日本人がこのまま資産運用をせず、現金・預金で持ち続けていたらどうなるでしょうか。現金や預貯金は運用されないお金、つまり「死に金」であり、経済を動かすことがありません。そのため、ただでさえ少子高齢化が進んでいく日本でこの状態が続くと、日本経済は尻すぼみとなってしまいます。

一方で、株式等の運用資産は「成長資産」と呼ばれ、投資によって企業が成長するだけでなく、個人の金融資産も運用リターンによって増やすことができます。そのため政府は「貯蓄から投資へ」とスローガンを掲げて、「iDeCo」や「NISA」などを広めていますが、投資未経験者にとっては、敷居が高いと言わざるを得ないようです。

資産運用を始める前にまずやるべきこと



「投資=怖いもの」と思っている人に、いくら投資を勧めても、やるはずはありません。怖がる理由のほとんどは「よくわからない」からです。日本はバブルの崩壊があり、投資の怖さを痛感したあとに、今度はデフレが長く続いて、投資で良い思いをする経験がほとんどなかったことも原因としてあるでしょう。しかし、しっかりとした知識を持って投資を行ってきた人は、ダメージも少なく、投資を怖いとは思っていないはずです。まずは、金融リテラシーを子どものうちから身に付けさせることが重要であるように思います。

知ることで怖さはだいぶなくなります。銀行や証券会社で言われるままに、iDeCoやNISAを始めることがないように、まずは投資に関する本を1冊、あるいは初心者向けの投資セミナーなどに参加してみてはいかがでしょうか。


情報提供元: トクバイニュース
記事名:「 日本人が「貯金好き・投資嫌い」の理由を解説