茨城県日立市にある葬儀社「いばそう企画 有限会社」の林代表取締役は、父から会社を受け継いだ1998 年以降、さまざまなアイデアで会員に寄り添うサービスを展開してきた。多くの会員から絶大なる反響が寄せられる、日立市内専門葬儀社ナンバーワンの「お葬儀のいばそう」が葬儀にかける思いや今後の展望について、林代表取締役に聞いた。

悲しいだけが葬儀じゃない。「お別れ式」で死と生に寄り添う

一般的な葬儀は、宗教者の方が主導して行うものです。葬儀社は、宗教上執り行われる葬儀から逸脱しないように、あくまでもサポートする立場として式場の準備などを行います。ですから、全国どの地域でも、通夜・告別式の形式はほとんど同じです。<当社が多くの会員さまから支持されている理由の一つに、宗教上の葬儀とは別に、火葬前の「お別れ式」に注力していることが挙げられます。

葬儀社として、故人さまをきれいにして差し上げることはもちろん重要です。それに加えて、本気でお別れに向き合うことが大切だと考えています。 通常、ご家族さまは故人さまとのお別れを悲しむ間もなく、葬儀の段取りに追われます。あれもしなければ、来客に対応しなければとなれば、悲しむ暇もありませんよね。故人さまとのお別れの時間をないがしろにしてしまうと、葬儀後に一人になったときにふと死別の悲しみが襲い、心にぽっかり穴が空いたように感じてしまう方も少なくありません。

通夜、葬儀、お別れ式と、火葬までの間に故人さまとの時間を持つことで、ご家族さまそれぞれがある程度納得する形で故人さまとのお別れができるのだと思います。また、その間には「悲しみ、涙する」ことも必要ですが、「感謝し、微笑む」時間も大切ではないでしょうか。当社では、このような時間を設けられるよう、会員さまの心に寄り添うさまざまなサービスを提供しています。

残された家族のため、送られる故人のために「感謝と笑顔」の時間をつくる

私たちが手がける葬儀では、ご家族が故人と対話する時間を設けています。例えば、ご家族の前で棺の中のご遺体をきれいにして差し上げているときには、「故人さまはどんな方だったんですか?」などお伺いしていきます。 すると、「お酒が好きだったよね」「スポーツが好きだったよね」と、みなさんで棺を前にワイワイと語る時間が生まれます。その後は、スポットライトが当てられた棺を前に、一人ずつ故人と対話をする「別れの盃」の時間と空間があり、「ありがとう」「楽しかったね」とお別れの挨拶をして、その後通夜が始まります。

私たちは、通夜の日に伺った話から、故人が好きだったものを、ときには手作りをして用意します。パチンコが好きなら、ペーパークラフトで大きなパチンコ台を作ったり、温泉が好きなら温泉のお湯をパックに入れたりといった風に。 そしてすべてではないのですが、故人と遺族の空気感を見て「感謝状」を出し、それを喪主さまに音読してもらいます。最後に、棺の蓋を閉めるときには拍手をしてお送りする。そうすると、悲しみ涙だけではなく、感謝の気持ちで故人をお送りできますよね。 もし、死後の世界に三途の川があるとすれば、きれいな洋服を着て小脇にはパチンコ台や温泉、感謝状を抱えているわけです。向こうの世界で、「なんだかいい葬儀をしてもらったな」と喜んでもらえたらいいですよね。 自分が葬儀をしてもらう立場になって考えると、涙ばかりの葬儀ではつらいですよね。楽しいことがたくさんあったねと、笑顔でもお別れできたらうれしいと思うのです。

「日本一幸せな会員」を作るために、生と向き合うサービスも展開

葬儀社の会員システムは、基本的に亡くなられた後のサービスを行うものです。しかし当社では、それ以外に会員さまの生前をみつめる「Next life シート」というサービスも展開しています。会員さまを日本一幸せにするために何をすべきか考えた結果、「生前から幸せに関与していく」ことが大切なのではないかと思ったわけです。 Next life シートは、「悔いのない人生」を実現するために、会員さまそれぞれがこれから何をすべきかを一人で考えずにお茶会の中でみんなで一緒に考えて記入します。子どもの頃の夢、大人になってからの夢、「10 年後にはこうでありたい」「人生が終わるときまでにこれを経験してみたい」など、自由に記入します。生きる目標や目的を明確にすることで、より生き生きと人生を謳歌できるようになるでしょう。

以前、余命を宣告された方がお茶会でNext life シートを書く際に、「やりたいことや目標を書こうと思っても書けない」と悩んでいらっしゃいました。そこで「遠い将来ではなく、今できることを書いてみたらいかがでしょうか」と促したところ、「こんなにやりたいことがありました!私、死んでいる場合じゃないんです!」と明るく言って、帰る際には笑顔を振りまいていらっしゃいました。 これからやりたいことを考えて書き出すという作業は、多くの人に希望を与える大切なことだと思います。「日本一幸せな会員」づくりを目指して、死後だけでなく、会員さまの生前から寄り添うサービスを今後も展開していきたいです

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 葬儀社として、生前から寄り添うサービスを。「日本一幸せな会員づくり」を目指して