AIの研究開発を行うスタートアップ企業ラディウス・ファイブが2022年8月29日にβ版を発表したAI画像自動作成サービス『mimic(ミミック)』に対して、Twitterなどで「他人が描いた作品が悪用されるのではないか」といった疑問や批判が噴出。多くのクリエイターから「自分の作品を使わないで」といった注意喚起が相次いでいました。

『mimic』はディープラーニングで独自に開発したAIを用いて、最小15枚程度のイラストで画風を学習し、独自の新しいイラストを生成することが可能。想定される利用用途として「イラスト制作の参考資料」「SNS・ファンコミュニティを活性化」としており、あくまで著作権者自身が使うサービスだとしています。画像アップロード時にTwitterによる認証が必要で、チェックボックスによる確認フローがあり、生成した画像に透かしが入るようになっていますが、第三者による悪用が完全には防げないといった懸念が指摘されていました。

2022年8月29日には、「mimicの実施例」として紹介された『変女 〜変な女子高生 甘栗千子〜』(ヤングアニマルコミックス)などの此ノ木よしるさんら協力クリエイターに誹謗中傷が集まっているとして、「不正利用に関しては運営側の課題であり、クリエイターさまは関知されてません」といい、「そういったことは現に慎むようにお願いいたします」と呼びかけています。

また、同日夜にはTwitterで『mimic』β版の全機能停止と公式Discordの閉鎖、作成済・作成中のイラストメーカーの削除を発表。利用者が著作権を保持していないイラストを著作権者の許諾なくアップロードといった「不正利用に関する課題が改善できた場合に、正式版をリリースする予定」としています。

著作権法は、情報関連産業・教育・障害者・美術館等におけるアーカイブの利活用のために著作物の利用をより円滑する目的で平成30年(2019年)に改正されており、AIによる学習を目的とした「情報解析」について、次のように記されています。

第三十条の四

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

― 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合

二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合

三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあっては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

『note』のCXOを務める深津貴之氏(@fladdict)は、改正著作権法に触れて「著作者の権利を不当に害する範囲」がどこまでになるのか、という点が焦点になると指摘しています。

イラスト業界とAIエンジニア業界の文明衝突。騒動の根っこには「改正著作権法、第三十条の四のニ」というのがある。
「大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行う」ケースでは、著作者の許諾はいらないというもの。

要は、ネットのビッグデータを漁って、AIを学習させる行為は、「著作者の権利を不当に害する範囲」でなければ、引用とかみたいに合法でやって良いよん。というもの。
で、これから「著作者の権利を不当に害する範囲」とは、どの辺までか… というのが争われることになるんやと思う。

「海外で同じようなサービスが生まれるのでは」「法規制でAI学習させるなというのは筋が悪い」といった意見も上がっていた『mimic』のリリースとその反応。『mimic』は「AIにイラストを学習させることに様々なご意見があることは承知しておりますが、日本発の、クリエイターとともに歩むサービスを作っていきたいと考えております」としており、法令に沿ったガイドラインのほか、ユーザーから受け入れられるサービスへ開発を進めることが求められます。

mimic(ミミック)
https://illustmimic.com/ [リンク]

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 「海外で同じようなサービスが生まれるのでは」 AI画像自動作成サービス『mimic』に不正利用の懸念が噴出→全機能停止へ