5人組ガールズヒップホップグループ「lyrical school(リリカルスクール)」。9月11日にアルバム『BE KIND REWIND』をリリース、9月13日に赤坂BLITZ大成功をおさめたライブを皮切りに全国ツアーを展開中です。



ビクターエンタテインメント移籍後初となる『BE KIND REWIND』は、「VHS」がテーマ。『秒で終わる夏』、『パジャマパーティ』、『Tokyo Burning』などの人気曲はもちろん、新曲や”スキット”などリリスクらしいエンターテイメント性がギュッと凝縮された14曲の豪華な内容。 また、収録曲である『LAST DANCE』は映画愛あふれるMVが話題に。今回は、この『LAST DANCE』の監督も務めている、lyrical schoolプロデューサーであるキムヤスヒロさんに色々とお話を伺いました!


【前編】lyrical school プロデューサー・キムヤスヒロに聞く 新アルバムやMVへのこだわり「長いようで短い青春と重ね撮りした”VHS”」

https://getnews.jp/archives/2204763 [リンク]



――前編でも楽しいお話を伺いましたが、続けて色々お聞かせください。まず、映画好きのキムさんから、メンバー5名それぞれにオススメ映画をレコメンドするなら? というのをお願いします。


キムヤスヒロ(以下、キム):映画好きってほどではないですけど!いや、これすっごい悩んだんですよ。(メモを取り出す)


――考えてきていただいて、ありがとうございます! ではminanさんからお願いします。


キム:minanは家で『クレヨンしんちゃん』をほとんど見せてもらえなかったって言ってたんで、『オトナ帝国』(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』2001)でどうでしょう。家族愛ものとか好きだと思うので。あとはワンシチュエーションもののコメディも好きなイメージあるので、超クラシックですけど、ヒッチコックの『ハリーの災難』(1955)。minanへのおすすめは割とパッと出てきました。


himeも実は映画たくさん観てるらしいんですけどヒップホップ映画以外では、何系が好きか分からないので、笑えてほっこりする日本映画にしました。『茶の味』(2004)はどうでしょう。音楽も良いしテンポもいい。『茶の味』、変わった映画だけど、hime以外のメンバーも面白いっていってくれる気がするんですよね。あっ、risano以外は(笑)。


――risanoさん以外(笑)。でも自然がたくさん出てくるので好きかもしれませんよね。


キム:確かに、自然と家族愛もありますしね。risanoは難しいんですよね、本当。でも2つ考えて、まずはK DUB SHINEさんと仕事させてもらっているので『凶気の桜』(2002)。コワいのが苦手みたいなので勇気いるかもしれないですけどね。後は、努力した結果が出るという話が好きだと思うので『ベスト・キッド』見ればいいんじゃないかなって思って(笑)。


――良いですね! 1984年版と2010年版がありますが。


キム:カンフーより空手の方がとっつきやすいと思うので,1984年版が良いかも。


yuuは、映画好きなので『戦艦ポチョムキン』(1925)と『市民ケーン』(1941)観た方が良いんじゃないですかね(笑)。この2本って美大とかで映像を勉強してた人間は学校で観る映画あるあるなんですよね。授業で絶対見せられる(笑)。

冗談はさておき本当のお勧め映画は、『10ミニッツ・オールダー』(2002)。この作品は、オムニバス作品なので、好きな作風の作品があったら、その監督作品を掘り下げるきっかけになるかなと。なんとなくですけど、なんかyuu好きそう。


――楽しい映画の見方ですよね! 最後にhinakoさんはいかがでしょうか?


キム:hinakoが『ハイスクールミュージカル』(2006)が好きといってたのですが、僕はちょっとそのラインの映画に詳しくなくて。音楽、青春のラインで言うと『シング・ストリート』(2016)はどうでしょう。


――なるほど!私もそうですが、地方から上京してきた人は『シング・ストリート』結構ささるんですよね。


キム:そうそう、そういうのってありますよね。あと、ファンタジー好き方向で、いちかばちかラインでいうと、『Dr.パルナサスの鏡』(2009)。テリー・ギリアムの作品の中では観やすいと思うし、僕もこの映画大好きなのでハマったら嬉しいなという。いや、難しいかなぁ。


――ありがとうございます。皆さんへのセレクトが「これが出てくるか!」という作品ばかりでさすがです。


キム:いや〜。僕、人に映画勧めるのあんまり得意じゃないんですよね。周りも映画好きばっかりだったりして、映画の話はめちゃくちゃするんですけど。浅野(BIG-D 、lyrical schoolバックDJ)も、東京藝大の院で映画脚本が専攻だったんで。



――メンバーもスタッフも映画好きが自然と集まった「lyrical school」なんですね。それこそ、新海誠さんがインタビューで「lyrical schoolを聞いている」と答えてらして。


キム:そうなんですよ、僕『秒速5センチメートル』(2007)大好きなんで、嬉しかったです。


――それこそ『LAST DANCE』のMVとか新海さんに観ていただきたいですよね。


キム:『BE KIND REWIND』もぜひ聴いていただきたいです。事務所にメールしてみようかなと思います(笑)。

『天気の子』まだ観れていないのですが、新宿を聖地巡礼している人も多いらしいですけど、田端のシーンがあるらしく、僕、実家の最寄駅のひとつが田端なんですよ。田端の居酒屋の大将も「『天気の子』観たか?」って言ってたりして。そう言えば「君の名は」が上映開始される直前に、その居酒屋の朝4時の閉店後、店閉め切って大将とふたりで『秒速5センチメートル』観たりもしました(笑)。



――今キムさんのお話を伺いましたが、映画は子供の時から好きなんですか?


キム:所謂、谷根千エリアでずっと暮らしてきて、上野の映画館でいわゆる「アニメ祭」みたいな、『ドラゴンボール』とか観たり。実写の映画も話題作とかはどうやら一通り連れてってもらってたみたいですね。母が映画や美術館とかがすごい好きだったんで。そんなところから映画に触れて。テレビ番組もそうなんですけど僕の年齢だとリアルタイムで絶対観てないでしょ、って作品も観させてもらって。金曜ロードショーとかも毎週家族で観る習慣もあったし。でも自分のお小遣いで映画を観に行く様になったのは中学生からですかね。高校でそれが加速して。


――何がきっかけですか?


キム:高校でバンドやりたい!ってなって、リリスクの曲を作ってくださっている坪光さんの弟が高校の同じクラスだったんですけど、坪光弟が学年で一番ギターが上手くて。僕はその時何もできなかったんですけど思い切って「一緒にバンドやろう」って誘ったんですよ。バンドって言ってもコピーバンドなんですけど。ちなみに(坪光)兄貴の方も中高の先輩で、もう当時は大学生だった坪光さん(兄)にベースで入ってもらったこともありました(笑)。


それで一緒にバンドやるようになってから、坪光君と小説やら映画やら音楽やらの話をするようになって。最初のうちは教えてもらうばっかりだったんですけど、昨日日聴いたアルバムとか観た映画の感想を話したり、僕が映像を作り始めてからそれがどんどん加速して行った感じですね。音楽室とか音楽室とか美術室に放課後ずっとたまって話をする日々がすごい楽しくて。


――超青春じゃないですか!


キム:めちゃくちゃ楽しかったです。中高の生活ではあの時間が一番良かったなと思うんですよね。あえてめちゃ恥ずかしい言い方すると、自分俺たちしか知らないものを共有している気持ちになる時間。今も仲が良くて、坪光君(弟さんの方)は宗教学の研究者をやっているんですが、奥さんは色んなバンドでフルートを吹いている方で、リリスクの『brand new day』のフルートを吹いてくれてるんですけど。リリスクのアルバムが出来たら真っ先に送るし、ライブも来てくれるし、ずっと関係は続いています。


――ちなみにキムさんは高校時代バンドでどのパートだったんですか?


キム:ギターボーカルです。曲は、NUMBER GIRL、ゆらゆら帝国、SUPERCAR。あと、何やったっけな。反町隆史やりましたね。『POISON』やりました。


――『POISON』!良いですよね。盛り上がる。でも、そんなバンド好きなキムさんが今アイドルプロデューサーをされていて、周りも驚かれたんじゃないですか?


キム:最初はビックリしたかもしれないですね。でも、坪光さんも、もともとハロプロ好きだったりして。世代的にも『ASAYAN』が人気で。アイドルに抵抗があるとかそういう事は無かったですね。後、tofubeats君がremixしたももクロの『ももいろパンチ』は本当にくらって。僕の周りもめちゃくちゃハマったんですよ。多分、あのリミックスなかったら、リリスクやろうっていう気持ちにならなかったかも。


でも本当、リリスクやりたいなと思って、始めたタイミングの2010年ってトマパイ(Tomato n’Pine)とかもいたし、TIFも始まったし、タイミングが良かったんですよね。Negiccoも好きで。Negiccoさん、レーベルメイトにもなったので、mza君と一緒に『愛のタワー・オブ・ラヴ』でお仕事ご一緒させてもらって、嬉しかったですね。


【次のページでは、キムさんが今注目しているアイドルの話から、アルバムアルバム『BE KIND REWIND』のお話をもっとお届け!】




――今、注目しているアイドルさんはいるんですか?


キム:「桜エビ~ず」ですね。今すごく好きです。いい曲書いて、歌も良くて、アートワークもいいっていうのを真面目にやるということの尊さ。そういう部分って絶対にアイドル業界から失われちゃいけないって個人的に思っているので。何目線だよって話ですけど笑 どちらかというとアイドル業界で働いている人としてっていうよりは、1アイドルファンとしての話ですね。そういう意味で桜エビ~ずは、久しぶりにすごく良いなって。作ってるもののクオリティーは高いし、その中にちゃんとメンバーそれぞれの”きらめき”があって。



――前半でも色々お聞きしましたが、『BE KIND REWIND』についても改めて色々聞かせてください。本作は6曲目の『-CM-(skit)』を境にパートごとに分かれていますよね。『Over Dubbing』から『LOVE TOGETHER RAP』までの明るいパート、『大人になっても』から『YOUNG LOVE』までのエモいパートっていう。そういった曲順はどの様に決めたのですか?


キム:僕はリリスクで『date course』の頃からずっと同じ事をやってるんです。『date course』のコンセプトは、前半に恋愛ソング、シングル曲が並んで、後半で、その恋が失恋に終わったみたいなメロウな曲が並ぶっていう。やっぱり、コンセプトを意識したときに、どうしても時間軸使って話が展開するんで、後半にコンセプトを言い得てるような曲が並ぶ。そうすると必然的に夏曲が最初に固まるという。


――『WORLD’S END』も時間の流れがあるとおっしゃっていたので、今回もそうなのかなと。


キム:朝から夜みたいな流れは多少意識しているかもしれないですね。『パジャマパーティー』がお泊まり会テーマなので、そこに向かって行く感じ。けど、1日の出来事じゃないしランダムに重ね録りされたVHSのイメージだったので、その感じが明確にはならないように気をつけました。後は『Over Dubbing』が肝心で、あの曲があそこに入れば後は何とかなるなと。だから『Over Dubbing』はアルバムの中で作詞のお題が一番難しい曲だったと思っています。『Over Dubbing』には主人公に葛藤と旅を与える役割があって。葛藤っていうのは、大人になりきれないっていう葛藤。旅っていうのは、冒険を求めて大人へと生き急ぐ旅みたいな。


楽しい時間があって、だけど、徐々に後半になるにつれて、それが終わりに近づいてるんだっていうのに気付く。それを認めてくみたいな時間が描ければいいなと思ってたんで。それも込みで、序盤に楽しい曲が並んだのかなって。


――なるほど。あとお聞きしたいのが、『-ending talk-(skit)』の中で「最後の曲です、どうぞ」と話した後に、『LAST DANCE』が流れるという構成になっています。でも実際には、その後『パジャマパーティー』も、『REW ) PLAY (FF』もある。『LAST DANCE』を最後の曲にしなかった理由は何ですか?


キム:このアルバムで『LAST DANCE』に向かって、どんどん大人へと生き急ぐ中で、一つ終わりを迎えるって瞬間があったときに、あともう少しこの時間をどう楽しむかとか、その先に何があるかっていう答えっていうのは、何かしら曖昧でも、俺たちなりに書いてあげなきゃいけないかなっていうのはあって。単純に、僕が、『BE KIND REWIND』ってアルバムをノスタルジーのアルバムにしたくなかったっていうのもあります。


過去を振り返ることを僕は悪いとは思わないけど、ずっと今を更新していたい想いがあったりとか。そうやって過去とどう付き合って行くかっていうのが今だし、それが未来につながることだと思うから。木村好郎という名義で、僕、『REW) PLAY (FF』の歌詞を半分書かせてもらってるのですが、どうにか自分なりの答えを書けないかなって思って。うまく答えを提示できたかどうかはわからないですけど笑 このアルバムを聴いて、もし自分の青春時代とかそういうのと重ね合わせて思ってくれたらありがたいし、『LAST DANCE』という1回終わらせたみたいな曲の後に続きがあるのが重要かなって。


――そうお話聞いてからだと『パジャマパーティ』の印象もまた変わりますよね。


キム:あの曲って、「大人じゃない、子どもじゃない」という歌詞で、このアルバムで設定した葛藤に対して半ば暴力的に答えを出してる曲だと思うから。別にどっちでもよくない?みたいな。それって、つまり、そんな急いで大人になろうとする必要はないし、かといって、大人になったからってもう青春が終わったっていって悲観するような話じゃないよねっていう曲なのかなって。そもそも青春って終わった時にしか青春の中にいたと気付けないものなので。



――すごくすごく納得しました。こうしてお話を聞いていると曲順決めにもストーリーがあって、それこそ映画作りの様だなあ、すごいなあと思うのですが、キムさんはいつか映画を撮りたいと思いますか?


キム:撮りたいですね! 大学2年、3年ぐらいから脚本書いてて、4年生の卒制で撮りたかった映画があったんです。だけど、リリスクを大学時代に始めたら忙しくなっちゃって撮れなかった。ま、今思うと超つまらない脚本だったんで、それはそれで良かったんですけど笑本当は今でも撮ればいいじゃんって感じなんですけどね、ダサい言い訳するとなかなか物理的な時間とかの問題で出来ていないですね。だから、以前『アイアム野田映画祭』というイベントで短編を作ったんですけど、ああいう機会って本当にありがたいですね。


【動画】キムヤスヒロ監督作品『待つ男』

https://www.youtube.com/watch?v=RmRPMSs4sgk [リンク]


――私も映画祭遊びに行っていて、キムさんに投票しました! 大賞とオーディエンス賞をダブル受賞したんですよね。


キム:すごい嬉しかったです。でも、ザ・ギースの高佐さんに、イベント終わった後「データください」って言われたのが一番嬉しかった。元々せきしろさんのファンで色々なきっかけで僕もリリスクメンバーもイベントに関わらせてもらっていて、ザ・ギースさんもアイアム野田さんも大好きなんで、本当に楽しいです。

あのイベントの時にはリリスクの仕事の合間で作品作れたんですよね……。そう考えると映画作りも、やりたいならやれよって感じではあります。早く、実現したいですね。


――いつかキムさんの映画を観れることを楽しみにしています。そしてまた今日の様にお話伺わせてください! ありがとうございました。


lyrical school 最新情報



「VDC Magazine 013」は『#predia』と『lyrical school』が表紙! 9月27日(金)より無料配布開始(※1部店舗9/30〜)

詳細:http://wp.vdc.tokyo/article/6994 [リンク]



『lyrical school』メンバーの自己紹介とマイブーム、9月11日にリリースしたニューアルバム『BE KIND REWIND』について一曲づつ紹介してもらったインタビューを、VDC Siteに掲載中。美麗撮り下ろしグラビアも見逃せません!あわせて、ぜひご覧ください!


lyrical school「次のアルバムにはこの曲を絶対に入れるって、一番最初に決まったそうです」ニューアルバム全曲紹介[Special Interview]

https://wp.vdc.tokyo/article/7003 [リンク]



【新アルバム『『BE KIND REWIND』』発売中!】


1 -special program-(skit)

2 Over Dubbing

3 秒で終わる夏

4 ドゥワチャライク

5 LOVE TOGETHER RAP

6 -CM-(skit)

7 大人になっても

8 Enough is school

9 Tokyo Burning

10 YOUNG LOVE

11 -ending talk-(skit)

12 LAST DANCE

13 パジャマパーティー

14 REW) PLAY (FF


【lyrical school Tour 2019 “BE KIND REWIND SERIES”】


<part.1>

lyrical school oneman live BE KIND REWIND

9/13(金)@マイナビBLITZ赤坂


<part.2>

PLAY 公演 ※対バンツアー

9/21(土)大阪RUIDO

9/22(日)京都 CLUB METRO

9/28(土)柏Thumb Up

9/29(日)高崎CLUB FLEEZE

10/6(日)NEXS新潟

10/19(土)浜松G-SIDE

10/20(日)VERSUS東海ホール


<part.3>

FF公演 ※ワンマンツアー

11/9(土)大阪CLUB JOULE

11/17(日)福岡DRUM Be-1

11/24(日)よみうりランド 日テレランランホール


http://lyricalschool.com

https://twitter.com/lyri_sch [リンク]



企画・写真・写真デザイン:周二郎

取材・文:藤本エリ

取材:山末あつみ


―― 表現する人、つくる人応援メディア 『ガジェット通信(GetNews)』
情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 lyrical school プロデューサー・キムヤスヒロがメンバーにおすすめしたい映画とは? アルバム『BE KIND REWIND』と「青春」の関係性も