アカデミー賞作品賞、監督賞ノミネートの『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)、『ミルク』(08)、カンヌ国際映画祭パルムドールと監督賞を受賞した『エレファント』(03)など、映画ファンが愛してやまない作品を放ち続けるガス・ヴァン・サント監督最新作『ドント・ウォーリー』は、ロビン・ウィリアムズが映画化を熱望した実在の男の物語だ。


主人公は、ポートランドの街を赤い髪をなびかせ、猛スピードで車いすを走らせていたという、強烈な個性の風刺漫画家ジョン・キャラハン。その彼の半生に魅せられたウィリアムズは、彼の自伝の映画化権を得て、ポートランドに縁のあるガス・ヴァン・サント監督に相談。ウィリアムズが去った後、その自伝をベースに脚本を仕上げ、20年を経て映画は完成した。一時は映画化実現が危ぶまれた時期もあったそうだが、積年の想いが実現したサント監督に、『ドント・ウォーリー』にまつわる話を聞いた。


●この企画が映画化されない、と思ったこともあったそうですね?


そうだね。あともう少しで映画製作をスタートできるのでは? という時が何度もあったよ。脚本を書いて、これで準備万端と渡すことができた時には、十分な時間をとってやっと今なのだなと、感慨深かったよ。


●映画が完成するためのカギは何でしたか?


ロビン・ウィリアムズは、ソニーの中に仕事用のライブラリーを持っていたよ。20年という月日がかかったのは、彼がほかの作品に取り組み中で、本作のための時間を費やす自由な時間がなかったということも、ひとつの理由だったと思う。そして、悲しいことに彼の死によってこの企画を止まってしまったが、脚本の第一稿を準備してみて、いつでもあの時代に戻ることができるという血(細胞)が、自分の中に十分にあるということがわかった。


そんな時「ロビンが遺したジョン・キャラハンの脚本がありますが、どうしますか?」とソニーのスタッフが僕に連絡をしてきた。そういう連絡がくると考えてもいなかった。そして僕は、「もし企画がオープンなら、取りにいくよ」と返事をした。少しの間考えて、僕自身のなかで、この物語はいつも興味深いと思っていたとわかったからね。


●ジョン・キャラハンさんに会ったことがありますよね? 彼はどういう人でしたか? 映画の中のようにアナーキー(無秩序)な精神の持ち主でしたか?


彼は、本当に赤い髪をしたアメリカに住む“アイルランド人”でした。面白いのは、彼はアイルランドには何も関係のないところで育ったにもかかわらず、(アイルランド人ように)トラブル・メイカーで、そのなかでもユーモアを忘れていなかった。彼には養子として育ててくれた家族のほかに、究極のカトリックとして修道女たちに育てられたわけだからね。


彼が酒を飲むようになった時期は子どもの頃に母親を知らないで育ったことで、彼が(世界から)追い出されたと感じていて、その理由が彼には何かわからなかったからだ。彼は養子の兄弟4人の長男で、ほかの子どもたちとは違うと感じていたと僕は思う。彼は家族の中で居場所がないと感じていて、それは大きな問題だった。子どもの頃、家族に血のつながりがないということがわかることは精神的なダメージが大きくて、彼はいつも彼の母親が誰で、どこにいるのかを探していた。だからこそ、あえていつも茶目っ気を出していたのだと思う。



●音楽のダニー・エルフマンさんの仕事は、どう評価していますか?


最初の仕事は『誘う女』だった。94年か95年頃。ティム・バートンの映画で彼を知ったけれど、とても派手な印象だ。まるでヘヴィメタルをオーケストレーションするようなね。彼はテクニカルな意味で、何をすればいいかわかっていた。これは音楽というより、サンドエフェクトの世界。ミックスの方法を、彼は熟知していた。それが素晴らしいと思った。


ただ、『誘う女』の当時はサウンドトラックというものがよくわかっていなかったが、彼はとても名前が知られていた。そこで一緒に座り、こういう音楽を作りたいと伝え、彼も了承した。それで作曲をお願いしたが、「でも現場に一緒にテストノートを作らなければいけない」という話になった。ちょっとしたサンプルの音もね。ただのメールオーダーみたいに任せるだけではないとうことを、知らなかった。彼が勝手に作って送って来るものだと思っていたので、それは面白かった。楽しい作業だった。


たくさんこれまで一緒にやってきたが、彼自身の物語の語り口を持っていることはすごくありがたく思っている。ストーリーテリングをする上で、僕のストーリー以外のところで、彼はオーディオでストーリーを語っているからね。


●ジョン・キャラハンがイラストを描き始めたら止めることができず、多くのアーティストが持つような脅迫観念に取りつかれていたと語っていますが、どう思いますか?


おそらく共有していると思う。イラストを描くことはとても特別なことで、それはまるでコメディーのようなもので、非常に特徴的な笑いの要素を伝えなければならない。そして、ジョンとロビンは似ているところがある。ロビン・ウィリアムズは、笑いに対して脅迫観念に囚われていたと思う。たとえば彼が誰かを笑わせ始めたら、それがグループであろうが、ひとりであろうが、彼は笑わせ続ける。それはジョンと同じだよ。彼のイラストにひとたび反応を得たら、彼は歩き回り、より多くの人にイラストを見せて、より多くの笑いを取ろうとしたから。


彼は通りの角にいて、いろいろな人を止めては「これって面白い?」と聞いていたよ。多くの人にイラストをインプットしてもらいたいと思うと同時に、もっと多くの笑いの反応を見たいと思っていた。ひとりやふたりがイラストを見るだけでは十分ではなく、さらにもっと多くの人に見てもらいたいと思っていた、ということだね。だからこそ、彼のイラストがメディアに掲載されること、そしてそれらについての反応の手紙が届くことはとても重要だったわけだよ。


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(執筆者: ときたたかし) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 ガス・ヴァン・サント監督インタビュー 故ロビン・ウィリアムズと『ドント・ウォーリー』映画化への想い明かす