今回はkamosawaさんのブログ『はてなの鴨澤』からご寄稿いただきました。


いま就活が売り手市場なのと経済政策はぜんぜん関係ないよ (はてなの鴨澤)


若い人が「就職が楽になったから安倍政権支持」みたいなことを言ってるのを見ると心が痛い感じがするので、公開されてる政府統計でわかるようなことを、ちょこっと書いておきます。


あらすじ。


1. 生産年齢人口は2012年以降に激減

2. 労働者の高齢化が進行

3. 増加したのは安い仕事

4. 企業の採用文化に大きな変化なし


では行ってみましょー。


1. 生産年齢人口は2012年以降に激減


生産年齢人口(15~64 歳) は、平成7(1995)年に8716万人でピークを迎え、昨年2017年の確定値で7591万6千人*1と、1100万人ほど減少しました。


*1「人口推計(PDF)」2018年05月30日 『法務省統計局』

http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201805.pdf


長期のグラフはこんな感じです。*2


*2:「生産年齢人口等の推移(PDF)」『首相官邸』

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/pdf/sankou_h290530.pdf



1千万人規模の変化というのはそれだけで非常に強烈ですが、特に2010年代前半の減少が顕著なのが見て取れると思います。


ここで起きているのは団塊世代の高齢者区分入りです。出生数が260万人を超えていた昭和22-24年(1947-49年)の第一次ベビーブームに生まれた世代を団塊の世代と呼びますが、昭和22年生まれが満65歳となり始めた2012年1月1日から、全員が満65歳となった2014年12月31日までの3年間に、合計600万人以上が高齢者入りしています(「700万人以上」にならないのは65歳までに亡くなった方が15%弱居るから)。


ところでこの部分をさらに細かく見ると、民主党政権(2009年9月~2012年11月)の間に高齢者入りした人数が少なめになっているのがわかります。これは出生数が非常に少ない昭和20、21年生まれを含むためです。※1


※1:細かい数字は人口統計資料集2014 *3、2015 *4、2016 *5、2018 *6 などより


*3:「人口統計資料集(2014)」『国立社会保障・人口問題研究所』

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2014.asp?fname=T02-05.htm&title1=%87U%81D%94N%97%EE%95%CA%90l%8C%FB&title2=%95%5C%82Q%81%7C%82T+%94N%97%EE%81i%82R%8B%E6%95%AA%81j%95%CA%90l%8C%FB%82%A8%82%E6%82%D1%91%9D%89%C1%97%A6%81F1884%81%602012%94N


*4:「人口統計資料集(2015)」『国立社会保障・人口問題研究所』

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2015.asp?fname=T02-05.htm&title1=%87U%81D%94N%97%EE%95%CA%90l%8C%FB&title2=%95%5C%82Q%81%7C%82T+%94N%97%EE%81i%82R%8B%E6%95%AA%81j%95%CA%90l%8C%FB%82%A8%82%E6%82%D1%91%9D%89%C1%97%A6%81F1884%81%602013%94N


*5:「人口統計資料集(2016)」『国立社会保障・人口問題研究所』

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2016.asp?fname=T02-05.htm&title1=%87U%81D%94N%97%EE%95%CA%90l%8C%FB&title2=%95%5C%82Q%81%7C%82T+%94N%97%EE%81i%82R%8B%E6%95%AA%81j%95%CA%90l%8C%FB%82%A8%82%E6%82%D1%91%9D%89%C1%97%A6%81F1884%81%602014%94N


*6:「人口統計資料集(2018)」『国立社会保障・人口問題研究所』

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2018.asp?fname=T02-05.htm&title1=%87U%81D%94N%97%EE%95%CA%90l%8C%FB&title2=%95%5C%82Q%81%7C%82T+%94N%97%EE%81i%82R%8B%E6%95%AA%81j%95%CA%90l%8C%FB%82%A8%82%E6%82%D1%91%9D%89%C1%97%A6%81F1884%81%602015%94N



左から2番目の2010年から2012年が民主党政権期です。2011年は増加すらしています。変化量で見ると、さらによくわかります。



2012年以降の4年間は毎年100万人以上のマイナスになっており、特に2015年は150万人もの生産年齢人口が失われています。2016年は社会増(海外からの移住)で少し増加していますが焼け石に水です。


この部分のインパクトの大きさは、95年から2011年にかけての17年間と2012年から2015年の4年間の減少幅がともに500万人程度、ということに現れていると思います。


2. 労働者の高齢化が進行


生産年齢から外れた高齢者ですが、彼らの労働参加率が高まっていることも確かです。平成29年版高齢社会白書*7のグラフを見てください。


*7:「第1章 高齢化の状況(第2節 4)」『内閣府』

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_4.html



2012年の9.3%から2016年の11.8%へと、高齢化率は1.27倍になりました。


もうちょっと細かく見てみましょう。「労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約,概要,統計表等」の表1、「年齢階級別労働力人口の推移」が強烈です。


*8:「労働力調査(基本集計)平成29年(2017年)平均(速報)結果の要約 (PDF)」2018年01月30日 『法務省統計局』

http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf



・25~34歳は男女とも長期の減少

・男性の総数は横這いでも15~64歳は減少。45~54歳と65歳以上が増加

・女性は総数も増えているが、その1/3は65歳以上


つまり、若者、中堅層が大きく減少し、男性はもちろん女性の高齢者までが、どんどん働きに出ているわけです。これが現在の「労働力人口の増加」の実態です。


3. 増加したのは安い仕事


これは厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」の「所得の分布状況」の変化を追えばわかります。平成28年(2016年)までのものしかまだ出ていませんが、これを平成25年(2013年)と比べてみましょう。


平成25年(2013年)



・平均値537.2万円

・中央値432万円

・平均所得金額以下の者の割合60.8%


平成28年(2016年)



・平均値545.8万円

・中央値428万円

・平均所得金額以下の者の割合61.4%


平均値が1.6%上がっているのに対し、中央値が1%下落、平均所得金額以下の者の割合が0.6ポイント上昇しているわけです。これは平均的な給与所得世帯の所得が減少しつつ、高額所得世帯の所得が増加していることを示します。(このかん世帯あたりの平均人員はほとんど変化してません)


4. 企業の採用文化に大きな変化なし


これは統計を見るまでもないと思います。新卒採用が主力のままで、たとえば氷河期世代が新規にキャリアを積み始めるような道は非常に限られたままです。


ながなが書いてきましたけど、さてみなさま。


円安に伴う株価上昇とかは確かにあります。ありますけど、いまって本当に好景気だと思いますか?


「若者の就職が売り手市場」なのは、ホントーに政策のおかげだと思いますか?


オリンピックとか終わったら、どういうことになるんでしょうね~。


執筆: この記事はkamosawaさんのブログ『はてなの鴨澤』からご寄稿いただきました。


寄稿いただいた記事は2018年6月10日時点のものです。


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 いま就活が売り手市場なのと経済政策はぜんぜん関係ないよ (はてなの鴨澤)