冬の風物詩である、こたつにみかん。現代の生活様式では徐々に廃れつつある風物詩ですがそれでも、みかんは冬のおやつとして今なお私たちの生活の一部になっています。

 そんなみかん、実はすごいチカラを持っていました。最新の研究からご紹介します。(梓川みいな:正看護師)

■ みかんの色素が骨粗しょう症対策に?

 みかんには「みかん色」とも呼ばれる特有の色素が大量に含まれています。それは、カロテンの仲間である「β-クリプトキサンチン」。この色素が実は体の骨に良い作用をもたらしてくれることが2022年に発表された論文「骨代謝に対するβクリプトキサンチンの作用」の中で明らかになりました。

 人間の骨は、骨をつくる細胞(骨芽細胞)と骨を壊す細胞(破骨細胞)の2種類が作用して新陳代謝を行っており、破骨細胞は血液内のカルシウム濃度にも影響しています。老化や閉経による女性ホルモンの低下により、骨芽細胞よりも破骨細胞の方が優位になってしまうことで骨粗しょう症を引き起こしてしまいます。

 みかんに多く含まれているこのβ-クリプトキサンチンには、破骨細胞を抑えて骨芽細胞の働きを促すという効果があると考えられています。結果、骨粗しょう症予防効果も高く期待されているのです。

■ みかんの色素に抗炎症作用が

 先述したβ-クリプトキサンチンはカロテンの一種であり、基本的な働きはカロテンと同じ。血中に存在して主要な働きをするカロテノイドは、リコピン・α-カロテン・β-カロテン・ルテイン・ゼアキサンチン・β-クリプトキサンチンの6種類ですが、β-クリプトキサンチン特有の働きもあるのだとか。

 2014年に静岡県浜松市(旧三ケ日町)の町民を対象とした研究「ミカンの摂取と健康に関する栄養疫学調査」によると、みかんをよく食べている人たちは肺がん、糖尿病、関節リウマチ、動脈硬化や肝疾患、メタボリックシンドローム等の様々な生活習慣病リスクが食べていない人に比べて低いという効果を確認しているという報告がされています。

 さらに詳細な内容は元の論文を読んでいただくとして、筆者個人的にはこの二つの論文から得られた知識は非常に面白く感じました。毎日みかんを食べていればとりあえず健康になりやすいってこと?そんな安直なものではないのですが、健康に良いものであるということは間違いなさそうです。

 ちなみに、同じ色をしているように見えるオレンジに含まれているβ-クリプトキサンチンの量は、みかんと比べると1/10の量になるそうです。

■ では1日何個くらいがいいの?

 では1日何個くらいがいいの?という話になるわけですが、論文「ミカンの摂取と健康に関する栄養疫学調査」の中にある「ミカンの摂取頻度別にみた血中 β-クリプトキサンチン濃度」のグラフデータを見てみると、「週に3個以下」の人に比べ「毎日1~3個」食べる人の場合は濃度が約倍、「毎日4個以上」の人は約3倍も高くなっています。

 これを参考にすると、毎日4個以上!と言いたいところですが、さすがにそれは無理なので、ほどよく1~3個。毎日1個程度が続けやすいかもしれません。

 なお、食べる時はみかんの中の実に付いている白い繊維質も一緒に食べることをオススメします。白い部分や薄皮には「ヘスペリジン」という成分が豊富に含まれており、こちらも毛細血管を強くしたり、抗酸化作用が強いなどの健康促進効果が高いもの。

 ただし消化にはあまりよくないので、しっかりよく噛んで食べましょう。

■ 実はみかんの皮も薬の材料に

 みかんの皮を乾燥させたものは「陳皮」という漢方の生薬となります。この「陳皮」、効能としてはイライラを発散させてリラックス状態にさせやすい、胃の動きを良くして調子を整える、血行を促して冷えからくる症状を改善させるといった効能を持っており、基本となる漢方に追加して使われることも多いものです。

 ちなみに筆者はゆずピールやレモンピールといった、柑橘類の砂糖漬けが無性に食べたくなる時があるのですがもしかしたら体がそういった効果を欲しているのかも?

■ みかんは丸ごと健康の塊

 果肉から皮まで捨てるところナシのみかん。最新の研究からはとても興味深い骨への作用も分かり、さらにみかんへの興味がわいてきそうです。手で剥けて手軽に食べられて健康にも良いなんて、いいことずくめですね。

<引用・参考文献>
骨代謝に対するβクリプトキサンチンの作用(PDF)
ミカンの摂取と健康に関する栄養疫学調査:三ヶ日町研究
写真・画像:写真AC/イラストACより

みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は? | Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 梓川みいな
情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 みかんは体に良いってほんと? 効能は?適量は?