学校で日直が担当する仕事のひとつ「学級日誌」。その日の学校生活であったクラスの出来事をまとめ、担任に提出します。

 成人式で高校時代のクラスメイトと再会した藝大生が、当時の思い出話をする中で学級日誌を撮影した写真を見つけ、その内容をTwitterに投稿。学級日誌のページには、クラスメイトのリアルな似顔絵がほぼ原寸大で描かれていました。

 高校時代の学級日誌を「内容そっちのけで友達の似顔絵描いた学級日誌が出てきた」とTwitterで紹介したのは、東京藝術大学美術学部の先端芸術表現科に在籍する菅野湧己さん。話をうかがうと、学級日誌の似顔絵を描いたページは「高校3年生の9月になります」とのことです。

 ページをよく見ると、日付は9月1日。伝達事項の欄には「9月になったので共通テストまであと4か月!コロナでどうなるか分からないけど、くいがのこらないようにがんばっていきたい」と書かれています。

 しかし、そんな内容よりも目を引いてしまうのは、ページの高さいっぱいに描かれた人物のリアルな似顔絵。モデルとなったのは菅野さんのご友人だそうで、顔のちょうど右半分が描かれ、まっすぐこちらを見つめています。

 ほかのページにも色々落書きや似顔絵を描いていた、という菅野さん。この“大作”については「ちょうど学級日誌が顔の大きさと同じくらいなことに気がつき、半分顔を描けば面白いのでは?という軽い思いつきで始まったと思います」と、当時を思い出しながら話してくれました。

 ページを開くと、まず目に飛び込んでくるのはこの似顔絵。圧倒的な存在感で、学級日誌に書かれた今日の出来事には意識が行きません。

 担任の先生も同じ気持ちだったようで、コメントを書く欄には以下のように記されています。

 「待って……マジで〇〇(モデルになった生徒の名)に見られてる感じがして落ち着いてコメントできない(笑)いやーすごいなーほんとにすごいなーいやマジですごい(語彙力)」

 文面からすると怒っているわけではなく、生徒とも近しい関係であることが分かりますね。

 学級日誌は日直が交代して記入するものだけに、このページもほかのクラスメイトが見ることになります。当時の反応について、菅野さんは次のように語ってくれました。

 「周りの人は驚きと共に凄いと言いながら笑っていたような気がします。また、本人の顔の前に日誌を半分重ねて写真を撮ったのを覚えています。恥ずかしがっていたようでしたが楽しんでくれたと思います」

 似顔絵としての完成度もさることながら、ページの大きさが人間の顔と同じくらいだから、ということに気づいて表現を考える発想力は、藝大志望者ならではという感じ。菅野さんは芸大の入学式に、校門に設置される「東京藝術大学入学式場」のレプリカ看板を制作し、出席するというパフォーマンスアートも披露しています。

 現在、藝大で取り組んでいる現代アート表現について、菅野さんは次のように話しています。

 「普段から身の回りにあるものたちと関係性を築き上げながら作品を制作しています。もし自分の身の回りのものたちに意思があるとしたら、私に何を語りかけてくるのだろうと考えながら生活しています」

 学級日誌に描かれた似顔絵から現在の作品表現に結びつけるのは難しいですが、身近なものから気づきを得て作品制作に至る過程は、ちょっと似ているかもしれません。菅野さんが今後、どんな作品を作っていくのかにも期待したいですね。

<記事化協力>
菅野湧己さん(@wakumiiii_)

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 当時の担任も腕前に驚愕 学級日誌に描かれた似顔絵の作者は藝大生