「ウルトラシリーズ」に登場する怪獣「ジャミラ」といえば、元は「人間」の宇宙飛行士。最終的に“人間時代”に最も欲した「水(ウルトラ水流)」によって倒される悲劇的な結末が印象的です。

 放送から50年以上が経過した現在も、シリーズ屈指のインパクトを残す怪獣として知られていますが、その魅力をウルトラファンが、ファンアートのジオラマ作品で伝えました。

 制作者はマイティ-Dさん。小学生の頃に、父がレンタルしたウルトラマンのVHSで「故郷は地球」を視聴したのが、ジャミラとの出会いでした。

 「単なる『勧善懲悪』ではない物語に心を打たれました。小さい頃から、ずっと心に残っている怪獣でしたね」

 第1作「ウルトラQ」から始まり、2022年現在もTV新作「ウルトラマンデッカー」や映画「シン・ウルトラマン」で、連綿と歴史が紡がれていくウルトラシリーズ。話題を提供し続けていく中で、マイティ-Dさんも不意に当時を思い出し、今回制作にいたりました。

「おじいちゃん。アレはどこから来たの?」
「彼はね、帰って来たんだよ。」

 禅問答のようなやり取りのつぶやきで紹介された本作のコンセプトは、「ジャミラは人間」と「怨嗟は終わらない」。元は人間だった境遇に、マイティ-Dさんが「故郷は地球」を視聴した時に感じた、「果たして彼の無念は晴れたのか?」という“もやもや”がベース。「神社の境内の奥にある茂みをくぐって出現したジャミラ」をジオラマで表現しました。作品画像2枚目では後ろ姿も紹介。

 ところで、ジャミラは「人間」だった宇宙飛行士時代に宇宙を漂流した結果、水も空気もない惑星に不時着。過酷な環境下で生き抜いていく中で肉体に変化が生じ、最終的に「怪獣」に変貌したキャラクター。だからこそ「後輩」にあたるイデ隊員は、戦うことをためらいました。

 フルスクラッチで制作した造形は、「人間」だったことを表現するため、頭蓋骨・肋骨・大腿骨などの骨格を予め作り、さらにその上に粘土素材の「スカルピー」を貼り付けました。結果、「水」が弱点であることが容易に連想できるほど、全身が干からびたデザインに仕上げています。

 一方、舞台に神社を選んだのは、本作のもうひとつのコンセプトである「怨嗟」から。

 「一度『土に還った』ジャミラが、何らかのきっかけ……おそらく『人間の過ち』で再びジャミラが現れたという設定を考え、『神聖で厳かな場所(神社)』と、そこへ出現した『怨念』を作ろうとしました。表情やポーズは、『怒り』『憎しみ』『悲しみ』を引きずったようなイメージにしています」

 言うまでもありませんが、本作はマイティ-Dさんによる「妄想」です。

 しかし、作品投稿に対して、1万を超えるいいねが寄せられたのは、「実は本編を観ながら作業したんですが、涙なしでは見られず、何度か手元が狂ってしまいましたね」と語るほどの魅力を、ウルトラ戦士ではなく、対峙する「怪獣」が引き出したのが遠因にありました。半世紀を越えてもなお、「ウルトラマン」が愛され続ける一端ともいえるかもしれません。

<記事化協力>
マイティ―Dさん(@mighty_d0706)

(向山純平)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 帰ってきたジャミラ 幼き日に抱いた“もやもや”をウルトラファンが表現